数日前、クラブレニーから配信されたメールで「オート基礎が実際の必要量よりも多く調整されて低血糖を起こす可能性があるので、オートモード使用中の入浴は注入を一時停止するように」との注意があった。
この説明、少し言葉足らずになっていると思う。
昨日、これが原因と思える状態で低血糖になったので、自分の経験を記事にまとめる。
説明が足りないと感じるのは次の2点。
- 「オートモード中の入浴は注入を一時停止する」とあるが、この「オートモード中」とはどの状態を指しているのか曖昧であり、一時的にマニュアルモードにしている場合は『一時停止する必要がない』とも読めてしまう
- 「注入されていないインスリンが加算されたオート基礎」が起きるのは、「注入一時停止」を忘れた時だけではなく、他の場合でも起こる
オート基礎注入量を決めるアルゴリズム
「PROTOCOL FOR HYBRID CLOSED LOOP TECHNOLOGY」のP.9にオート基礎注入のアルゴリズムの記述があるので、以下に引用する。
How Auto Basal is Determined
The 5 minute Auto Basal doses are determined using multiple factors including:
1) Current SG: The most recent SG reading
2) PID Algorithm:
a) Proportional: How far SG is away from the 6.7 mmol/L target
b) Integral: How long SG has been away from the 6.7 mmol/L target
c) Derivative: How rapidly SG has been changing
3) Insulin Feedback: Total amount of active insulin (basal and bolus) on board.
4) Auto Mode Max Delivery: The maximum amount of Auto Basal that can be delivered over a period of time. It is recalculated every 24 hrs using fasting values and the median TDD.
The median TDD is comprised of basal and bolus insulin delivered over the last 2-6 days. It is used to update Auto Mode parameters such as Safe Basal, ISF, and Max Delivery.
Note: The algorithm calculates Auto Basal using the above parameters; it does not learn an individual’s time of day patterns or diurnal variations (i.e., dawn phenomenon).
5分ごとのオート基礎注入によるインスリン量は、次の複数要因で決まる
1) 最新のセンサグルコース値(SG)
2) PIDアルゴリズム
a) SGが目標値120からどれくらい乖離しているか(P:比例計算)
b) SGが目標値120から乖離している時間(I:積分値)
c) SGが変動する速度(D:微分値)
3) 残存インスリン量(ベーサルとボーラス合計の残存量:IOB Insulin On Board)
4) オートモード最大注入レート(24時間ごとにTDDから再計算される)
直近2~6日のTDD(Total Daily Dose、一日の総インスリン量:ベーサル+ボーラス)の中間値(平均値ではない)を使い、オートモードのパラメータ(セーフ基礎注入、インスリン効果値、最大注入量など)が計算(更新)される。
注:オートモードのアルゴリズムは、これらのパラメータを用いて注入量を計算するが、ポンプ使用者の時間的な変化(例えば曉現象)を学習する機能はない。
直近6日(2~6日と記されているのはオートモードは最低2日のマニュアルモードでの使用が前提になるため)のTDD(一日の総インスリン量)を使い、オートモードのパラメータが決まる。「注入一時停止」を行わなければ、実際よりもTDDが増加することになる。クラブレニーの説明は、これを指していると理解できる。
でも、TDDに影響を与えるのは、「注入一時停止」だけではない。
なお、私は、入浴時など、ポンプを体から外す時は、必ず「注入一時停止」を行っている。これは、640G使用中に習慣にした。
実際よりもTDDが増えたトラブル
先週の金曜日(7/22)、朝食後に300を超える高血糖になった。夕食後も血糖値が高く、かなりの量をボーラスしてもなかなか下がらない。リザーバ交換予定日だったので、夜交換した。その時、チューブに気泡があることに気づいた。これが原因でインスリンの効きが悪く、見かけ上のインスリン注入量が増え、この日のTDDは46.20になった。
これがオート基礎に影響したようで、昨日(7/25)はインスリン注入が多くなり低血糖になったようだ。
オート基礎注入のパラメータは、深夜0時すぎに自動計算される。7/25に使用された直近6日間のTDDは、次のとおり。
月日 | 1日総量(TDD) | 基礎レート | ボーラス | 糖質ボーラス |
7/19 | 36.450 | 5.850 | 30.60 | 18.90 |
7/20 | 35.775 | 7.075 | 28.70 | 22.50 |
7/21 | 26.950 | 6.350 | 20.60 | 15.30 |
7/22 | 46.200 | 7.050 | 39.15 | 24.15 |
7/23 | 37.700 | 6.200 | 31.50 | 28.00 |
7/24 | 32.775 | 6.325 | 26.45 | 23.25 |
下図は、7/25(月)のオート注入。昼食をモスバーガーでテリヤキチキン・バーガーを食べた。
12:47 5.75単位をミールボーラスし、5分後に食事
13:11 1.5単位を脂質・蛋白質用として追加ボーラス
13:57 残存インスリンがボーラス量の50%以上あり、グルコース値が98だったにもかかわらず、オート基礎注入がスタートした(いつもならグルコース値が140〜150くらいになるとオート基礎がスタートする)。オート基礎注入が約1時間15分続き、注入された総量が1.35単位で、通常よりも20%くらい多い。
脂質用に1.5単位ボーラスしたことも原因の一つだが、オート基礎注入が多過ぎる。夕方、20分ほど歩いたことも低血糖になった原因。これらの結果、18時ころに厳しい低血糖(57mg/dL)になった。
770G関係のブログ記事リスト
これまでに書いた記事:
6/26 「770Gの使用開始」
6/27 「770Gオートモードを使い始める」
6/29 「770Gセーフ基礎注入に課題が・・・」
6/30 「770Gのオートとマニュアルのそれぞれの利点を生かす」
7/03 「770Gの使用開始から10日:経験したこと・感じたこと」
7/09 「770Gオートモードのコツとクセを理解する」
7/16 「770Gでセンサ使用開始初日にグルコース値が不安定になる問題」
7/18 「770Gオートモード中に補正(追加)ボーラスする方法」
7/20 「770Gで xDrip+、スマートウォッチ、Nightscoutを使う」
7/24 「770Gでセンサの延長使用と6時間ごとの「要較正」」