8/5(水) 18:00 「まとめ」に追記
私はヘモグロビンA1cの値をあまり気にしていない。ひとつの指標に過ぎないと考えているので、HbA1cを幾つにしたいという目標を持っていない。そのように考える理由は幾つかある。HbA1cについての私の考えをまとめる。
目次
HbA1cの変動とトレンドを見ている
2016年11月28日に1型を発症した。突然の出来事で戸惑い、最初の1年くらいはHbA1cの数値に拘っていた。高血糖を減らすことを優先した結果、HbA1c5.5%を記録したが、今振り返ると馬鹿な対応だったと感じる。その後、血糖管理の仕方を覚え、目標を『低血糖を無くし、高血糖を減らす』に変え、今に至る。
HbA1cは、検査間の変動(変化・トレンド)を見るようにしている。
HbA1cは約2ヶ月間の血糖値の平均を示すものなので、私の場合、6.2~6.4の範囲が定常状態と考えている。その範囲を超える(あるいは下回る)場合、「なぜなんだろう?」と原因を考えるようにしている。上図で、この範囲を超えた箇所は、その原因を把握できている。
HbA1cが示すもの
HbA1cが何を示しているのか、その特性を理解することが大事と思う。
国立循環器病研究センターの『HbA1cってなに?』が参考になる。
www.ncvc.go.jp
以下に引用:
ヘモグロビンは赤血球内のタンパク質の一種で、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。血液中のブドウ糖がヘモグロビンとくっつくと糖化ヘモグロビンになります。
血糖値が高いほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなります。いったん糖化したヘモグロビンは、赤血球の寿命(120日)が尽きるまで元に戻りません。
血糖値の低い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が少なくなるので、HbA1cは低くなります。
血糖値の高い状態が続くと、ヘモグロビンと結合するブドウ糖の量が多くなるので、HbA1cは高くなります。
HbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したものです。
HbA1cは過去1~2ヶ月の血糖値を反映しますので、当日の食事や運動など短期間の血糖値の影響を受けません。
ここで重要なことは、HbA1cの検査値が「赤血球の寿命は120日」が前提になっていること。
赤血球寿命の個人差がHbA1cの検査値に影響を与える
この「赤血球の寿命は約120日」は標準的な場合で、実際は赤血球の寿命が120日よりも短い人、120日よりも長い人がいる。そして、赤血球は、体の中で、新しい赤血球が作られ、古い赤血球が壊されるが、一斉に入れ替わるのではない。毎日全体の約1%くらいずつ新しく作られ、古いものが破壊される。
そのため、(個人差から)赤血球の寿命が短い人のHbA1cは標準値よりも低く(「偽低値」)、長い人は標準よりも高い(「偽高値」)。
田原保宏先生は次のように述べている。
HbA1cが標準値と一致する患者はごく一部で、大多数の患者は何らかのずれを有している。この個人差の大きさと臨床的有用性を考え、±0.5%以内を許容範囲と考えるべき。ずれが許容範囲に収まる患者は68.2%で、残りの31.8%は許容範囲を超えている。特に問題なのは、4.6%の患者は±1%以上のずれを示す。4.6%という割合は小さいように見えるが、数十人の患者を診察すると、±1%以上ずれる患者が2~3人いることになる。
月刊さかえ 2023年6月号 47頁
詳細は、 記事「ヘモグロビンA1cの信頼度を調べる 」を参照
数年前、ある1型のブログで、血液検査のレポートを見たことがある。1型でインスリンが枯渇しているにもかかわらず、HbA1cが5%台の前半で極めて低い数値だった。グリコアルブミンを同時に検査していたので、換算式(HbA1c=GA÷4+2)で計算するとHbA1cは6.2%くらいだった。HbA1cに影響する疾患(溶血性貧血、脾腫など)を持っていないようなので、恐らく、標準値からのずれが-1%以上なのだろう。でも、当人はそれを知らず、HbA1cが健常者と同じような数値になっていると安心しているようだった。
検査結果が病院によって違う?
HbA1cの検査結果は、受診する病院によって異なることがある。
原因は
測定方法(HPLC法/免疫法/酵素法)の違い
検査機器の誤差
検体の鮮度(外部の検査機関に委託するための輸送時間)
などで、±0.2~0.3%の違いが起きることがある。
HbA1c検査でヘモグロビン量をカウントしている訳ではない。化学処理で、糖化ヘモグロビンの%を算出しているので、検査機器や環境による誤差が生じる。
詳細は次を参照
kagayaki-cl.jp
標準値からのずれの確認
HbA1c検査値の標準値からのずれを検証することができる。方法は次の3つ。
月刊さかえ 2023年6月号 47頁
1の方法は容易ではない。2はCGMのデータを使えば計算できる。
3は受診時に主治医にリクエストすれば検査してもらえる。グリコアルブミン(GA)は、血漿中のタンパク質がブドウ糖と結合している割合を測定するもので、直近2~3週間の平均血糖値が反映される。保険診療のGA検査は制約があるが、例外でHbA1cとGAの検査を同時に行うことできる。月刊さかえ202年2月号の記事から以下に抜粋。
保険診療においては、ヘモグロビンA1c、GAまたは1、5-AGの3項目のうち、どれか1項目を月1回測定できます。ただし、下記の①~④に該当する患者さんについては、同一月に3項目のうち2項目まで測定できます。
① 妊娠中の患者さん
② 1型糖尿病の患者さん
③ 経口血糖降下薬の投与を開始してから6ヵ月以内の患者さん
④ インスリン治療(自己注射)を開始してから6ヵ月以内の患者さん
なお、妊娠中の患者さんは1ヵ月に2回、GA検査を受けることができるようになっていますが、妊娠中の患者さん以外は、同じ項目を1ヵ月に2回算定することはできません。
私は2の方法で確認している。CGMのデータをNightscoutを使い保存しているので、簡単に計算できる。
標準値からずれは+0.1~0.2%、許容範囲内。検査値が若干高めに出ている。
まとめ
HbA1cは血糖値の状態を示す絶対的なものではなく、約2ヶ月間の平均血糖値にもとづく血糖管理のひとつの目安。だから、「HbA1cが○%以上なら・・・・の可能性がある」はスクリーニングとして有用かもしれないが、患者の管理指標としては最適とは言えない。
いずれにしても、HbA1cは約2ヶ月間の平均値になるので、日々の血糖管理が重要で、その結果(積み重ね)がHbA1cに現れる。
2023年12月に眼科を受診したとき、医師から「左眼に僅かな眼底出血がある」と言われた。この告知はショックだった。その後、定期的に眼科の受診では、眼底出血が増加していない。
日々の血糖管理をTIR(Time In Range)で行うのが最適かと言えば、そうは思わない。TIRが100%であっても、血糖値(グルコース値)が70~180の上限にはりついても100%になる。TIRよりもTITR(Time In Tight Range: 70~140に収まる割合)で管理するのが望ましいが、TITRの数値を簡単に表示できない問題がある。
私は、日々の平均グルコース値と標準偏差を見るようにしている。悪い日は、平均値が上がり、標準偏差が大きくなる。「低血糖をなくし、高血糖を減らす」を目標に、「低ければ食べる、高ければ射つ(ボーラスする)」を行っている。