1型でいこう!

My life with type 1 diabetes.

770Gの使用開始から10日:経験したこと・感じたこと

6/24(金)昼に640Gから770Gを切り換えて10日目、オートモードをONにして7日目になり、新しいポンプに慣れてきた。この間に経験したことと感じたことをまとめる。

   

 

オートモードは、面倒と感じる部分もあるが、クセとコツを把握すれば快適に使える。この把握が欠けているとポンプに振り回されるかもしれない。

 

2/26開催のDMF Kobeで、神戸大病院の廣田勇士先生が「オートモードに合わせつつ、ポンプと対話することが重要」「“ポンプと対話”とはポンプのコツを掴むこと」と仰っていた。この言葉が770Gを使う上での重要なポイントを示している。

 

770Gについて

770Gは「基礎レートの自動注入」が売り文句。でも、この「自動」との呼び方が誤解を与える可能性がある、と思う。さらに、770GはAI(Artificial Intelligence、人工知能)であると言う人がいるが、これは誤り。ユーザの血糖コントロールを学習して、オート基礎注入にフィードバックする機能は存在しない(ポンプを受けとる時、メドトロニックの担当者も770GはAIではないと言っていた)。

 

770Gオートモードは『ユーザの血糖コントロールをアシストしてくれる』と考えればしっくりする。何をどのようにアシストしてくれるのか、を理解することがコツを掴むことになる。血糖コントロールのやり方はひとり一人異なるので、770Gがアシストしてくれる内容(役立つ機能)もユーザごとに違ってくると思う。

 

事前準備

私は、予め77G の説明書を読み、海外のFacebookをチェックし、オンライン患者会に参加して、必要な知識を得ていた。そして、スムーズに770Gに移れるようにするために、640G使用中に事前準備(下記)を行った。

  • 糖質比を確認する
  • 基礎レート確認する
  • 常にボーラスウィザードを使用する
  • インスリン注入に基礎レートの増量を使わない
  • センサを腕に留置する
  • ポンプを体から離す時は、必ず「注入一時停止」を使う

この効果で、770Gに切り換える際に戸惑うことがなかった。

 

770Gへの切替と使用開始

使用開始前に640Gの登録データを全て770Gにコピーした。(物理的、精神的に)余裕のある日に770Gへ切り換え、使い始めた。770Gは640Gからメニュー構成とボタン操作が大幅に変わっているが、設定を640Gと同じにしたので、マニュアルモードで使用した2.5日間(金曜日の昼から日間日の夜)はメニュー構成とボタン操作を覚えて、慣れることに専念できた。

 

新しいセンサ(ガーディアンセンサ3)

センサの精度が向上しているので、きちんと較正すれば、表示されるグルコース値が実測値から乖離することは少ない。もちろん、これは、センサグルコース値は、間質液の測定値であるため、実測値(血管内のグルコース値)から10~15分遅れになるとの前提での話し。

 

私は、使用開始する半日前にセンサを留置し間質液に馴染ませている(Cold Marinate)ので、使用し始めた日から、センサ読み取り値(ISIG値)が安定している。

較正は

  • 使用開始日は、血糖値が高いときと低いときに較正するようにして、4~5回の較正を行う
  • 2日目は4回、3日目以降は3回の較正を基本にしている

今、センサ使用10日目(使用期限の7日を延長)。640Gのエンライトセンサに比べ、精度が良くなっていることを実感している。

 

較正が6時間ごとに必要な事象も経験したが、これが起きるとの情報を把握していたので、「6時間ごとの較正になった」と認識しただけで、戸惑うことはなかった。

 

オートモードによるインスリン注入

オートモードの”基礎”は、これまでの基礎と意味が異なっている(これまでの基礎は食事に関係しない血糖変動に対するインスリン投与との位置づけ)。

センサグルコース値が150mg/dL以内の変動に対して、ポンプは120mg/dLを目標に自動的に“基礎”としてインスリンを注入してくれる。そのため、ここで注入される”基礎”インスリンには、これまでの基礎に相当するインスリンと、糖質などを摂取したことに対するインスリンの両方が含まれる。

これは、本来の体の仕組みを考えれば当たり前のこと。膵臓のβ細胞が分泌するインスリンは、体内の血糖値の変動に応じたものであり、オート基礎注入の”基礎”に相当する。

770Gを使う上で、次の『オートモードの移行フロー』を理解することがとても重要。特に、下図の3つのフェーズで注入されるインスリンがどのようになるかを理解することは、期待する血糖コントロールに近づく早道と思う。それができないと、予想外の低血糖になったり、血糖値が下がらない、乱高下する、などが起こり、ポンプに振り回される可能性があると思う。

 

オート基礎注入の利点

血糖値が150以下であれば、5分ごとのセンサグルコース値に応じて、インスリンが注入されるのは、かなり便利。ただ、1回のインスリン注入量は、0.025~0.1単位なので、スピーディに血糖値が下がらず、じわじわ下がる感じ。このあたりは人によって異なると思う。

オート基礎注入を維持し続けられれば、かなり楽。640Gの時は、自分でポンプ操作が必要だった部分をポンプが担ってくれるので、QOLが向上する。

 

640Gで低グルコース前の基礎の注入停止が起きると、必ず30分以上停止する。停止が開始された直後にグルコース値が上昇に転じても止まり続ける。また、30分経過してもすぐに基礎注入が再開されず,放置すると高血糖になることがあった。770Gでは、このような心配が無くなった(と思う)。

 

オート基礎注入で「これは?」と感じること

オート基礎注入で困るのは、就寝中に120以下の血糖値(例えば90~100くらい)が2時間半以上続くと、オート基礎注入からセーフ基礎注入に入ること。日中、これが起きても「オート血糖値アラート」をONにしていれば、「要血糖値」のアラームが出るので対応できるが、就寝中はアラームが出ても対応できない。この結果、セーフ基礎注入に入り、90分間にわたりポンプが基礎を注入し続け、90分後にマニュアルモードになる。就寝中にこれが起きると低血糖になる可能性がある(詳しくは770Gセーフ基礎注入に課題が・・・を参照)。

 

就寝中の血糖値を90~110くらいにしているので、セーフ基礎注入に入らないようにするために、オートモードを停止することにした。木・金・土の3晩、就寝前にオートモードをOFFにしている。朝、起きてからオートモードをONに戻す、という使い方をしている。これで解決できた(詳しくは770Gのオートとマニュアルの利点を生かすを参照)。

 

もう一つ、オート基礎注入とセーフ基礎注入で困ることは、注入されたインスリン単位数を把握できないこと(残存インスリンも分からない)。ポンプのグルコースグラフの画面に移動して、の箇所にカーソルを移動してひとつづつの注入量を表示させて集計すれば把握できるが、かなり面倒。

 

「要血糖値」への対応

オートモードを使用していると、頻繁に「要血糖値」のアラートが出る。このアラートは、オート基礎注入からセーフ基礎注入に切り替わる時は必ず表示される。較正で血糖値をインプットして較正が完了した直後に「要血糖値」が表示されたこともある。「オート血糖値アラート」をOFFに設定すれば、アラートを消せるが、オート基礎注入を維持できなくなるので、OFFにするのは止めた。

「要血糖値」のアラートはウォーニング(注意喚起)と考えれば良い。事実、「オート血糖値アラート」のOFFでこのアラートを消せるのだから、この理解は間違っていないと思う。

「要血糖値」が表示されたら、無条件にポンプに表示されているグルコース値をインプットして、終わりにしている。この対応で問題なく使えている。

 

高血糖と脂質・タンパク質による後上がりへの対応

オート基礎注入では、センサグルコース値が150以上の場合に血糖値を下げる効果が弱いので、個別に対応する必要がある。

カーボカウントが正確であっても高血糖になることがある。また、脂質やタンパク質による血糖値上昇はカーボカウントでカバーできない。そのため、予想外の高血糖になった時や食事の内容に応じて、追加でボーラスしている。

その際のボーラスは、① オートモードをOFFにしてボーラスする、②ファントムカーボ(Phantom carbs)でボーラスする、の2つの方法がある。①は、沢山のボタン操作が必要で煩雑なため、②で行うようにしている。

 

下図は、7/1(金)に夕食でカレーライスを食べたケース。食事のカーボ量は85g、夕食の糖質比8.5なので10単位のミール・ボーラスをした。640Gでは、カレーを食べた時、後上がり防止として食後に4~4.5単位を追加ボーラスしていたが、770Gにしてからは、オート基礎注入で自動で入る分を考慮して少なめに追加ボーラスをするようにしている。今回は3.05単位の追加ボーラスをした。

   

 

7/1と7/2のレポート。

 

まとめ

770Gに概ね満足している。640Gから大幅に改良され、使い易くなった。

ポンプは道具なので、自分の血糖コントロールに役立つかどうかは使い方次第。770Gは汎用ポンプであり、自分の環境に合わせてカスタマイズできる余地がほとんどない。オートモードが万能でないことは明らか。

機能と特性を理解して、自分の血糖コントロールに合うように機能を取捨選択することで1型生活が便利なると考えている。