1型でいこう!

My life with type 1 diabetes.

TDDの調整で770Gオートの効きを維持する(追記あり)

2023/4/7 追記:TDD調整は中止した(詳しくは、記事「770GのTDD調整は禁じ手だった - 1型でいこう!」を参照)

 

昨年11/4の記事「770Gのオートモードはシックデイに不向きかも・・」で、オートモード中のインスリン注入量は直近6日間のTDD(1日のインスリン総量)中央値が影響することを書いた。

例えば、6日間のTDDが少ないと最大基礎注入レートが0.075になり、血糖値が下がり難くなる(← 私の場合)。

この問題に気づいてから、TDDと最大基礎注入レートを記録している。

 

オートモードのパラメータを決める仕組み

前述の記事の一部を再掲する。

 

Medtronic Australia作成のPROTOCOL FOR HYBRID CLOSED LOOP TECHNOLOGY」P.9からの引用。

How Auto Basal is Determined

The 5 minute Auto Basal doses are determined using multiple factors including:
1) Current SG: The most recent SG reading
2) PID Algorithm:
  a) Proportional: How far SG is away from the 6.7 mmol/L target
  b) Integral: How long SG has been away from the 6.7 mmol/L target
  c) Derivative: How rapidly SG has been changing
3) Insulin Feedback: Total amount of active insulin (basal and bolus) on board.
4) Auto Mode Max Delivery: The maximum amount of Auto Basal that can be delivered over a period of time. It is recalculated every 24 hrs using fasting values and the median TDD.

 

The median TDD is comprised of basal and bolus insulin delivered over the last 2-6 days. It is used to update Auto Mode parameters such as Safe Basal, ISF, and Max Delivery.

Note: The algorithm calculates Auto Basal using the above parameters; it does not learn an individual’s time of day patterns or diurnal variations (i.e., dawn phenomenon).

 

オートモードのパラメータ(最大基礎注入レート、最小基礎注入レートなど)は、直近6日間のTDD(一日の総インスリン量)の中央値で計算される。

 

これらのパラメータは、午前0時に前日までの6日間のTDDの中央値で自動的に計算され、当日のオート基礎注入で使用される。

 

実際の例:

  • 1/12~17のTDD中央値は30.37で、1/18の最大基礎注入レートは0.075
  • 1/19~24のTDD中央値は35.02で、1/25の最大基礎注入レートは0.1
  • 2/10~15のTDD中央値は40.33で、1/18の最大基礎注入レートは0.125

(中央値は6日間のTDDを使いExcel Median関数で算出。なお、この中央値の計算方法が770Gのアルゴリズムと完全に一致しているかは不明)

   

 

当然、摂取する糖質量が多ければインスリンが増え、少なければ減るので、TDDは概ね摂取した糖質量との比例関係になる。

 

1/5から3/1の8週間を集計すると

   

で、かなり変動している。毎日同じ食事を摂るわけではないので、このように変動するのは当たり前。そのため、食事の内容と量が770Gのオート基礎注入に影響することになる。

 

私の場合、TDD中央値と最大基礎注入レートの関係は

  • 中央値が31以下なら0.075
  •     32~39の場合、0.1
  •     40を超えると0.125

という感じ。

 

ざっくり言うと、高血糖時(ピークが続いている状態)のオート基礎注入による1時間あたりのインスリン量は、最大基礎注入レートが0.075になると、0.1の場合に比べ20~30%少ないと感じている。

 

1/5~3/1の8週間(56日間)で、最大基礎注入レートが0.075になった日数は10日、0.125の日数は11日。残りの35日の最大基礎注入レートは0.1。

 

そこで、最大基礎注入レートを0.1以上になるようにすれば、オートモードの効きを維持できる(1時間あたりのインスリン注入量が増えインスリンの効きが良くなる)と考え、TDDの調整を行うことにした。

 

【3/6 追記①】

オートモードに影響するのは直近6日間のTDDの中央値なので、6日中でTDDが少ない状態が2日間あっても影響しない。

昨日(3/5)は日曜日で3食が小食だったため、TDDが23.70と極端に少なかった。他の5日のTDDは高かく、昨日の23.70はオートモードに影響しないことが把握できたので、空ボーラスしていない。下図は昨日までの6日間のTDDで、オートモードに関係したのは、3/2と3/3のTDDであったと考えられる。その結果、今日(3/6)の最大基礎注入レートは0.1だった。

 

【3/6 追記②】⇒ 備忘録
新しいポンプを使い始めた場合、最初の2日間(午前0時から48時間)はマニュアルモードで使用し、3日目にオートモードを使える。この場合の「2日間のマニュアルモード使用」は、TDD情報の蓄積のためで、2日間のTDDからオートモードのパラメータ(最大基礎注入レート、最小基礎注入レート、インスリン効果値など)が計算される。

故障などの理由で使用中のポンプを交換するとき以下を行うと良いと思う。

  • 使用中のポンプの履歴データから1週間くらいのTDDをメモする
  • 新しいポンプの使用開始後、最初の2日間のTDDをメモしたTDDから標準的な値に合わせる(夕食前後のタイミングでTDDが低ければ空ボーラスしてTDDを調整する) ← 「標準的なTDD」は、自分の生活で標準的と思えるインスリン総量(私の場合は35)
  • 3日目にオートモードに切り替える

これで、3日目から交換前の770Gポンプとほぼ同じ状態でオート基礎注入を使用できる。

 

TDDの調整

夕食の食事用ボーラス後に、その日のTDD(1日のインスリン総量)がどのくらいになるかを予測できる。TDDが35以上になるように、夕食用のボーラスをした直後に、カニューレからチューブを外して不足分をマニュアルモードで空ボーラスする。

 

TDDの調整を夕食用のボーラス時行うのは、オートモードに影響させないように空ボーラスを行うためで、通常19時ころに夕食を食べていること、残存インスリン時間(AIT)を2.5時間に設定しているので、21時半ころに空ボーラス分の”残存インスリン”データがポンプから消えることを考慮した。この結果、空ボーラスが就寝中のオートモードにまったく影響しないし、就寝までの血糖コントロールに悪影響を与えることもない。

 

2/26(日)からこの方法で次のようにTDDを調整した。

   

 

例えば、2/28(火)の夕食用ボーラス後のTDDが31単位だったので、TDDを調整した。

 

マニュアル・モードに切り替えて5単位の空ボーラスを行った

 

TDD調整した結果

① 2/27(月)午前のグルコース変動

  • 起床後の実測107mg/dL
  • マニュアルモードに切り替え、ルーチンの1単位をボーラス
    (記事「770Gで高血糖に対応する」の内容。以下同様)
  • 朝食のカーボカウント後、食事用のボーラスを行った ⇒ 補食・補正ボーラス不要

 

② 2/28(火)深夜~昼のグルコース変動

  • 0:10 ポンプのグルコース値158だったので、165を血糖値入力にインプット  ⇒ 推奨ボーラスが表示され0.3単位を補正
  • 起床後の実測114mg/dL、較正を行った
  • 朝食にシュウマイ(脂質17.8g)を食べたので、後上がりを防ぐために1.2単位を30分でスクエア・ボーラス 
  • 10:20 グルコース値97mg/dL ⇒ ボーラスし過ぎで低血糖を防ぐために糖質20gを補食

 

③ 2/28(火)昼~夕方のグルコース変動

(ピークが187mg/dL、補正なしでオートのみで夕方95に下がった)


④ 3/1(水)夕食~3/2(木)昼のグルコース変動

  • 23:30実測170mg/dLで較正 ⇒ 推奨ボーラスが表示され0.1単位を補正
  • 5:40 低血糖アラームで目覚め、64mg/dLだったのでブドウ糖5gを補食
  • 起床後の実測111mg/dL
  • 朝食にシュウマイ(脂質17.8g)を食べたので、後上がり防止のために1.5単位を45分でスクエアボーラス

 

⑤ 3/2(木)昼~夕方のグルコース変動

16時ころ、血糖値が上がり続けているのに気づき、次のように対応した

  • 16:00 実測160mg/dLで較正 → 推奨ボーラス0.2単位が表示され、ボーラス
  • 16:40 ポンプのグルコース値181で上昇が続いているので、10 分後を予想した”185”を血糖値入力 → 推奨ボーラス0.55単位が表示され、ボーラス
  • 17:10 実測183mg.dLを血糖値入力にインプット → 推奨ボーラス0.1単位が表示され、ボーラス

 

とても良い結果と感じている。

 

まとめ

770Gは汎用ポンプのため、TDD(1日のインスリン総量)は使用者によって異なり、1日に100単位必要な人もいれば、20単位しか使わない人もいる。そのため、オート基礎注入量を固定するわけにはいかないので、1日の総量に応じて注入量を決めるアルゴリズムになっていると考えられる。また、同時に、ひとりの使用者が使うインスリン量を日ごとに変化する。このように異なる使用状況に対応するために、前日までの6日間のTDDの中央値を基準にオート基礎注入量を決める方法を採用したのであろう(6日間の平均ではなく中央値を採用していることも味噌と思う)。

 

一方、使用者の視点でみると、摂る食事も体調も毎日変化するので、TDDが大きく変動することがある。そのため、たまたまTDDが少ない日が続くと、オート基礎注入量に影響し減ってしまうことが起きる。これは、ポンプ使用者にとっては不都合。特に、シックデイで食欲不振で血糖値が高い状態が続くような場合、オート基礎によるインスリン注入が減少して血糖値が下がらなくなる恐れがある。

 

また、緊急時にペンでインスリンを射つことがあるが、その場合、同量を空ボーラスしてTDDに反映させている。これを行うことで、ペンを使うことでオート基礎注入量に悪影響しないようにできる。

 

私は、TDDが低い状態が連続することがあるので、その影響を避けてオートモード効果を安定させるため、TDDが常に35以上になるよう調整することにした。

 

770Gオートモードは、センサグルコース値の変動状況(目標値120からの乖離度合い、変動の速度、継続時間など)をPID(P:比例、I:積分、D:微分アルゴリズムで計算し、オート基礎のインスリン注入量を決める仕組みになっているようだ。この点がオートモードの優れた機能の一つと思う。