CGMセンサのウォームアップ時間(トランスミッタを接続して最初の較正を行えるまでの時間)を短縮して、センサ読み取り値(ISIG値)を安定させるアプローチについて、私の経験をまとめます。
この記事に記載する内容は、メドトロニックのガイドと異なる方法で使用するもので、自己責任で行っています。
センサを留置する部位、使用状況、ウォームアップ時間短縮のために使うトランスミッタの状態(内蔵バッテリー)などでCGMセンサが影響を受ける可能性があります。
新しいセンサを事前に留置して電極を間質液に馴染ませることでセンサ使用初日のISIG値が概ね安定します。海外ではこの方法をMarinateと呼び、Cold MarinateとWarm Marinateの2種類があります。最近まで、私はCold Marinateを使ってきました(詳しくは「CGMセンサのマリネと較正」)。
Cold Marinate (コールド・マリネ)
Cold Marinateは、使用する半日から1日前にCGMセンサを留置してセンサ電極を自然に間質液に馴染ませるやり方。私は、入浴時のセンサコネクタ防水のために、不要なトランスミッタをダミーで接続しています(詳しくは「CGMセンサ、DAY1のグルコース値を安定させる」)。
約3年間(1030日間)で使った96個のエンライト・センサのウォームアップ時間を集計しました。
2時間かかったのは約38%(37個)、60分以内で終わったのは約40%(38個)。再使用時のウォームアップは条件が異なるのでこの集計に含めていない(後述)。
96個のセンサは
① センサ留置後にすぐに使用開始(ウォームアップが開始される)
② 使用する半日前にセンサを留置(Cold Marinate)
③ 使用する1日前にセンサを留置(Cold Marinate)
の3タイプで使用。このタイプ別に集計したものが下図です。
ウォームアップ時間は、即使用の場合に2時間かかったのが38%、事前留置した場合が37%で、ほぼ同じ。ウォームアップが60分以内で終わった割合は、即使用が38%、半日前に留置した場合が37%、1日前に留置した場合が40%で大きな違いはないが、事前留置すれば45分で終わる場合があることが注目点。
CGMセンサの再使用
1030日間で使用したエンライト・センサが96個、センサ1個あたりの使用日数は約11日。センサは2クール(6日✕2回)使用を基本にしています。
なお、センサの留置部位は、8月まではお尻(正確には尻と腰の中間くらいの部位)、9月から腕(上腕の裏側)に変更しました。
再使用は、使用中のセンサからトランスミッタを外して充電→充電完了後にセンサにトランスミッタを接続→「センサ接続完了」のメッセージで「新センサ使用開始」を選択、で行います。
下図は、再使用時のウォームアップ時間の集計です。
新しいセンサの使用開始と比べ、明らかにウォームアップ時間が短くなっています。2時間かかった割合が23%、46%は60分以内で終わっている(6回は45分)。75分以内の割合は、新しいセンサ使用開始時が50%未満に対して、再使用時が61%でウォームアップ時間が短縮している。
再使用時にウォームアップ時間が短くなることがポイントで、これがWarm Marinateの効果の話につながります。
Warm Marinate(ウォーム・マリネ)
Warm Marinateは、新しいセンサの留置後に充電したトランスミッタ(Marinate用トランスミッタ)を接続して、ダミーでセンサを起動させウォームアップする方法。Marinate用トランスミッタはポンプに登録していないので、ポンプとは切り離された状態でセンサのウォームアップが行われる。そのため、実際のセンサの使用を開始する時は、センサ再利用と似た状態(ウォームアップの再実行)になると考えられる。
以下は、Terry Wittの投稿(FacebookのPrivate group)。
Terryは
- Cold Marinateはウォームアップ時間の短縮にはならないが、センサ使用初日に異常な読み取り値の発生を低減できる
- Warm Marinateはウォームアップ時間の短縮とセンサ使用初日の異常な読み取り値の発生防止に効果がある
と述べている。
なお、彼は、この投稿時点では、670Gとガーディアン・センサ3を前提としているが、640Gに適用できるものであり、かつ、近々日本で使用可能になる770Gでも有効。
Warm Marinate の方法は、Marinate用トランスミッタ(ポンプに未登録のもの)を使い
- Marinate用トランスミッタを充電器に挿入して緑LEDが消灯するまで充電する
- 留置した新しいセンサにMarinate用トランスミッタを接続する
- Marinate用トランスミッタの緑LEDが点滅(6回)するのを確認する
で行います。Marinateトランスミッタはポンプに登録されていないため、ポンプとの通信が行われない。緑LEDの点滅後、Marinateトランスミッタはセンサに負荷をかけ初期化(センサ起動)を行う。緑LEDが点滅しない場合はCold Marinateになる。
Warm Marinateの使用実績
3個のセンサをWarm Marinateしてから、使用開始した結果です。
センサA(Warm Marinate)
使用開始の1日前にセンサを留置し、充電したMrinate用トランスミッタを接続後、緑LEDの点滅を確認。
翌日、使用中のセンサからトランスミッタを外し充電。充電完了後、Marinateしたセンサに接続。
- 8:46 センサ準備開始
- 9:25 「要較正」のメッセージが表示 → 初回較正実施
ウォームアップ時間 40分
センサB(Cold Marinate)
使用開始の1日前にセンサを留置し、Marinate用トランスミッタを接続した。緑LEDが点滅しない。原因は、センサAの使用後に充電していないため、トランスミッタの電池が消耗したことのようだ。Marinate用トランスミッタは、ポンプからのレスポンスがないので、電波を発信を継続してポンプを探し続けるため、電池の消耗が激しい。毎回、Marinate用トランスミッタを充電する必要があると判明。
翌日、使用中のセンサからトランスミッタを外し充電。充電完了後、Cold Marinateしたセンサに接続。
ウォームアップ時間 2時間
センサC(Warm Marinate)
使用開始の1日前にセンサを留置し、充電したMarinate用トランスミッタを接続。緑LEDの点滅を確認。
翌日、使用中のセンサからトランスミッタを外し充電。充電完了後、Marinateしたセンサに接続。
- 8:57 センサ準備開始
- 10:57 「要較正」のメッセージが表示 → 初回較正実施
ウォームアップ時間 2時間
「センサ準備開始」のメッセージ表示後、履歴にISIG値が記録されなかった。20分ほど経ち、「センサ準備開始」の時点に遡ってISIG値が記録された。これは異常な現象で、Warm Marinateが影響したとも考えられる。
センサD(Warm Marinate)
使用開始の前夜(約10時間前)にセンサを留置し、充電したMarinate用トランスミッタを接続。緑LEDの点滅を確認。
翌日、使用中のセンサからトランスミッタを外し充電。充電完了後、Marinateしたセンサに接続。
- 8:34 センサ準備開始
- 9:23 「要較正」のメッセージが表示 → 初回較正実施
ウォームアップ時間 50分
まとめ
Warm Marinateを行った3回のうち2回は40~50分でウォームアップが終了。この事実からウォームアップ時間を短縮できることを確認できた。
センサDを使用開始の前夜に留置したのは、事前留置するタイミングがWarm Marinateの効果に影響するかを調べることが目的でした。Warm Marinateを利用する場合、1日あるい半日などの時間で事前留置する必要がなく、恐らく使用開始の2時間前で十分な効果を期待できると思います。
私は、起床後にセンサを交換するのがルーチンなので、前夜に留置して、Warm Marinateを行うつもりです。
ISIG値は、センサを再使用した場合と同じように、初日から定常値に近い数値になった。
これまで、Cold Marinateでセンサ電極を間質液に馴染ませる弊害で、ISIG値が定常値よりも高くなり過ぎることがあり、較正許容範囲外のエラーが起きる(詳しくは「新センサの初回較正エラーと低血糖」)こともあったが、今後は、これが無くなると思う。
ISIG値についても満足できる結果です。
補足:Marinate用トランスミッタの入手
メドトロニックはトランスミッタの寿命が1年で、保証期間を1年と定めています(詳細は「トランスミッタの寿命は1年」)。トランスミッタは病院の所有、患者に貸し出されている。
私は、1年経過したら、主治医に交換をリクエストしています。古いトランスミッタは病院経由で代理店に渡される仕組み(恐らく医療機器として廃棄する?)です。
その際、病院に次のように説明して、返却ぜすに手許に残します。
センサ使用初日のISIG値の不安定を解消するためセンサの事前留置が必要です。その際、入浴時にセンサコネクタを保護するためにトランスミッタをダミーで接続したい。
また、1年間の保証期間内なら、トランスミッタ不調に対してメドトロニックは交換してくれます(この場合の窓口はサポートライン)。