1型でいこう!

My life with type 1 diabetes.

オートモード中の高血糖を(推奨)補正ボーラスで対応する

オートモードで高血糖になった場合の補正は推奨ボーラスに従うのが本来の使い方ではないか、と感じている。

770Gを使い始めたころは、ファントムカーボの偽糖質でボーラスしていたが、しばらくして、マニュアルモードでボーラスするように変更した。

その後、推奨ボーラスを使う方法があることに気がつき(記事「770Gオートモードのチューニング」を参照)、いろいろ試した。これが便利なことがわかり、今は積極的に利用している。それでも、日中はマニュアルモードでボーラスすることが多いが、眠前に血糖値が高い時は、必ず、推奨ボーラスを使うようにしている。理由は、推奨される補正ボーラスは150mg/dLに下げるための単位数が自動計算され、150mg/dL以降はオート基礎注入でコントロールする仕組みになっているので、就寝中に低血糖を防げるから。

推奨される補正ボーラスを使用した経験をまとめる。

 

メドトロニックの資料

メドトロニックのガイドは、オートモード中に高血糖になった場合、患者がどのように対応すれば良いのかが曖昧。はっきり言えば、どこにも説明がない。患者はオートモードに血統コントロールを委ねて、じっと耐えろと言われているようなもの。高血糖がこれで解消できるのなら便利だけど、実際はそうならない。770Gのハイブリッドクローズドループ(HCL)では不十分だから、780Gでオートボーラス機能が加わっている。

 

システムユーザガイドの『推奨ボーラス』の説明は不十分で役立たない。236ページに次の説明が記載されいている。

オートモードで血糖値が150mg/dLを上回ると、ポンプは補正ボーラスを推
奨することがあります。スマートガードオートモードは推奨する補正ボーラ
ス量を計算します。スマートガードオートモードでは、血糖値や残存インス
リンを含む、数種類の要素が考慮されます。

アキュチェックガイドリンク血糖自己測定器から送信された血糖値をポンプ
で確認した後、補正ボーラスが必要であるとポンプが計算した場合、血糖値
の下にボーラス推奨と表示されます。ボーラスを選択し、推奨ボーラスを注
入してください。血糖値を手動入力した場合、ボーラス推奨画面が表示され
ます。ボーラスを選択し、推奨ボーラスを注入してください。
血糖値が150mg/dL未満である場合、またはポンプが残存インスリンを考慮
してボーラスがゼロの場合、補正は推奨されません。

この記述をさらっと読むと、「ふ~ん、そうなのか・・・」と感じるが、どのような場合に補正ボーラスが推奨されるのかの情報がなく、使えない。そもそも、日本ではアキュチェックガイドリンクが利用できないので、この説明自体が不適切。書かれている内容では、血糖値が150を超えると、自動的に補正ボーラスを推奨することがある、と読めてしまう。

原典の英語版System User GuideのP.234は以下の記述で、日本語版とは説明が微妙に異なる。

When a BG reading is over 150 mg/dL in Auto Mode, the pump may recommend
a correction bolus. SmartGuard Auto Mode calculates the recommended correction
bolus. SmartGuard Auto Mode takes several factors into account that include your
BG reading and active insulin.
After you confirm your BG reading from an Accu-Chek Guide Link meter on the
pump, Bolus recommended appears below the BG value if the pump calculates
that a correction bolus is needed. Select Bolus to deliver the recommended bolus.
If you manually enter your BG, a Bolus recommended screen appears. Select Bolus
to deliver the recommended bolus.
If the BG is under 150 mg/dL or if the bolus is zero after the pump accounts for
active insulin, no correction is recommended.

例えば、日本語版の「血糖値が150mg/dLを上回る」は、英語版の”a BG reading is over 150 mg/dL”で「入力された血糖値が150mg/dLを超えている」となっている。

 

実際に体験したことを基に、上記の記述を読み解くと、次のようになる。

  • 『血糖値入力』で150mg/dL以上の血糖値が入力された時に
  • 残存インスリンが少ない(あるいはゼロ)場合
  • 残存インスリンは、画面に表示されている『残存インスリン』に加え、オート基礎で注入されたインスリンも加味される
  • 血糖値を150mg/dLに下げるために必要なインスリン単位数が自動計算される
  • その計算結果がゼロ以上であれば、補正のためのボーラスが推奨される
  • 表示された指示に従いボーラスが可能(ボーラスする、しないは患者の判断)
  • 補正が推奨されたインスリン単位数の変更はできない
  • 補正のためのインスリン単位数は、直近6日間のTDDから計算されたインスリン効果値(毎日、深夜に更新)、入力された血糖値、センサ・グルコースの変動量(PIDアルゴリズム)で計算される
  • 補正ボーラスは残存インスリン時間の設定値(『注入設定』の『推定ボーラスの設定』の『残存インスリン時間』で指定された値)で影響される。この時間を短くすれば補正インスリンが増え、長くすれば減る

 

実際の使用例で説明する方が分かり易いので、幾つかのケースをまとめる。

 

較正時に補正ボーラスが推奨されたケース(9/5 15:25)

推奨ボーラスを経験する一般的なケース。

較正するために実測すると210mg/dL 。この実測値を入力すると、「補正ボーラスを推奨します」のメッセージが表示されたので、ポンプの画面に従い0.7単位をボーラス。

この補正と、オート基礎注入の効果で、約2時間半後にグルコース値100mg/dLに下がった。

   

   

   

 

積極的に推奨による補正ボーラスを使う(9/11 16:11)

ポンプに表示されているグルコース値が198mg/dLと高かったので、補正ボーラスが推奨されることを期待して、意図的に少し嵩上げした血糖費200mg/dLを入力。この時、ポンプに表示されている残存インスリンは0.05単位。

   

 

ダミーの血糖値入力なので、センサ較正を行わないを選択。

   

 

補正ボーラスが推奨された。なお、血糖値を入力した時点で、補正ボーラスが推奨される場合はポンプのバイブ(またはアラーム)が鳴るので、この後に補正ボーラスが起きるのかを把握できる。

   

 

『ボーラス』を選択する

   

 

追加で糖質の入力を行える(私は使ったことがないが、恐らく、糖質を入力すれば、それに応じてインスリン単位数が増加すると思う)。

   

 

『次へ』を選択し、ボーラス画面に移る。

   

 

インスリン単位数を確認して、ボーラス注入する。

   

 

血糖値を入力した時点(16:11)からボーラスするまでの約3分間にグルコース値が198から195に下がり、0.9単位の補正はインスリン過多で、その後、低血糖になった。

   



就寝前の高血糖を推奨による補正ボーラスを行う(9/9 23:22~9/10 0:49)

補食をし過ぎて寝る前に高血糖になったケース。このような場合に推奨による補正ボーラスは、ボーラスし過ぎを防げるのでとても便利。

4回の補正ボーラス(すべて推奨による補正)、合計2.75単位をボーラス。就寝中に低血糖が起きず、翌朝の血糖値は68mg/dL(実測)。

   

 

1回目の補正は、就寝前のルーチンで実測202mg/dLで較正した時に1単位の補正ボーラスが推奨された。

   

 

約40分後、グルコース値が上がり続けたので、ポンプの表示が224mg/dLから少し多めの225mg/dLを入力した。結果、0.75単位の補正ボーラスが推奨された。

   

 

17分後、さらに上がり続けたので、ポンプの表示232mg./dLをもとに、235mg/dL を入力した。0.4単位の補正ボーラスが推奨された。

   

 

約30分経ってもグルコース値が下降し始めないので、表示値から少し高めの235mg/dLを入力。補正を期待したが推奨されなかった。

   

 

5分後、ポンプのグルコース値238mg/dLにもとに240mg/dLを入力。

0.6単位の補正ボーラスが推奨された。

   

 

グルコース値が240mg/dLに対して、合計2.75単位の補正が計算されたのは、単に血糖値の高さだけで計算されるのではなく、PIDアルゴリズムで補正インスリン単位数が計算されるためと考えられる(PIDアルゴリズムについては、記事「770G HCLアルゴリズムとDMF Kobe」を参照)。

 

就寝前の高血糖に対応する(9/18 0:27) 

夕食で食べたパスタの後上がりで、寝る直前に高血糖になった。

ポンプのグルコース値175mg/dLを入力して、補正ボーラスが推奨された。

   

   

 

起床後の実測値81mg/dLでOK。

   



補正ボーラスが推奨されない(9/19 22:47)

夕食に食べた握り寿司のカーボカウントが間違っていたようで、食後、高血糖が続いた。21時過ぎに実測すると209mg/dL。この血糖値で較正したが、補正ボーラスが推奨されないので、マニュアルモードに切り替え1.5単位をボーラス。

 

22:47に残存インスリンが0.55単位で、グルコース値が201mg/dLの高血糖が続くので、補正ボーラスの推奨を期待して、このグルコース値をインプットしたが推奨されない。

   

   

 

補正ボーラスが推奨されない理由は、オート基礎でかなりのインスリンが注入されていたため(20時半から22:47までに約2単位がオート基礎で注入)。

   


就寝中の午前3時過ぎに、54mg/dLの低血糖アラームで目がさめ、補食した。
翌朝の起床時の実測は103mg/dL。

 

まとめ

補正ボーラスの推奨はトリガーとして血糖値の入力が必要。私は、ポンプに表示されるセンサ・グルコース値の精度を維持するために、きちんと較正している(原則、1日に3回、起床後・日中の血糖値が高い時・就寝前に較正)ので、実測値ではなく、ポンプに表示されているグルコース値を基準に血糖値を入力している(上昇傾向の場合は少し高めにする、などの補正を加える)。高血糖の場合に血糖値を入力しても補正が推奨されない時は、インスリンが足りている可能性が高く、しばらく(30分ほど)様子を見ることにしている。このやり方でボーラスし過ぎを防いでいる。これは不随効果。

残存インスリン時間の設定は、オートモードの効果を最大化するためにとても重要。私は、実際のインスリンの効果持続時間とは異なる2時間45分を設定している(詳しくは、「770Gオートモードのチューニング」を参照)。

 

推奨される補正ボーラスを使用することで、オートモードにお任せする範囲が増えた。

特に、眠前の補正ボーラスに使用するとボーラスし過ぎを防ぐ効果と、就寝中のオート基礎による適切なインスリン注入を行え、血糖値の安定につながっている。

もちろん、推奨される補正ボーラスは、アルゴリズムによる計算なので外れる(計算が実態と合わない)こともある。それでも、640G時代の経験と勘で補正していた時よりは精度が向上したと感じている。

 

770Gに移行して、今日で3ヶ月になる。当初、オートモードにはあまり期待していなかったが、試行錯誤と工夫で、大きな効果を得ているので、とても満足している。特に、QOLの改善に役立っている。