1型でいこう!

My life with type 1 diabetes.

患者会:アワコムに参加

昨日、徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター主催の患者会(「第30回 AWA DM.com(通称アワコム)」)にオンライン参加しました。

   f:id:taky5566:20220130192937j:plain

 

小谷紀子先生の講演があると知り、初めて遠隔地の患者会に参加しました。オンラインの開催でなければ参加しなかったので、コロナは嫌だけどコロナのお陰と言えなくもない。

小谷先生の講演は、2020年1月に開催されたYokohama VOX(この時はコロナ流行前だったので会場開催でした)で聴いているので、今回が2度目。

 

講演

小谷先生は大阪大学理学部卒業後に武田薬品工業に就職、出産から1年後に1型糖尿病を発症したことがきっかけで糖尿病医を目指して慶応大学医学部に入学、2009年に医師になった方です。2年前、この経歴を聞いた時、とても感銘を受けました。

現在は、国立国際医療研究センター病院に勤務されています。詳しい経緯は、こちら(↓)。

 

今回の講演は、”インスリンが「治療」ではなく「生活」になることを目指して”を演題に、ご自身のプロフィール紹介から始まり、インスリン製剤が発明された経緯と製剤の種類で何が異なっているのか(化学・薬学面)、最新デバイスの概要の話しが短時間あり、メインテーマの血糖コントロールについてはとても示唆に富む内容でした。

私の印象に残ったことを中心に書きます。

 

血糖コントロールとTIR

イントロとして下図でTime-In-Range(TIR)の説明がありました。

f:id:taky5566:20220130142258j:plain

この図はADA(American Diabetes Association 米国糖尿病協会)のHPで公開されている論文(下記)に記載があります。

 

TIRを達成するためには

の3つを理解し、調整・把握することが重要。

 

基礎インスリン

食事、活動がない夜間の血糖推移が安定しているかをリブレやCGMで把握する。安定していない場合の原因は

が考えられる。

曉現象は、ホルモン分泌の影響で午前3:30ころから朝にかけて血糖値が上昇する。

ソモジーは血糖値が低下した後に反動的に上昇に転じる。

これらが朝の高血糖の要因となっている可能性がある。

また、朝食や昼食を抜いた絶食テストを行い、食事摂取と無関係な血糖変動を把握することも必要。

食事、活動がない時間帯の血糖値が安定するように基礎インスリン量を決める。

 

私は、毎日、午前3:30から4時ころに血糖値があがる(曉現象)ので、ポンプで基礎レートを午前3時から8時まで細かく設定しています。これで、ほぼフラットになる。また、半年から1年に1回くらいの頻度で絶食テストを行う、あるいは胃カメラ検査などで朝食抜きになるときに、基礎レートが合っているかをチェックしています。

 

インスリン効果値

食事用のインスリンを射ってから4時間くらい経過後(残存インスリンがゼロの時)、血糖値が310mg/dL、これを下げるためにインスリンを3単位射ったとする。その結果、3時間後に100mg/dLであれば、インスリン効果値は(310-100)÷3u=70mg/dLとなる。このようにインスリン効果値を計算する方法が紹介された。

インスリン効果値を知ることができれば、

  • 眠前の補正を安全にできる(夜間低血糖を避けることができる)
  • 高血糖の時に過剰な補正による低血糖を防げる
  • TIRを達成できる

 

私は、インスリン効果値を把握することが大事と考え、実際、頻繁に使っています。高血糖を下げたい時、眠前に血糖値を調整したい時など、インスリン効果値からボーラスする単位数を決めています(ボーラス・ウィザードで自動計算、あるいはざっくり計算してマニュアル・ボーラス)。日常、ときどきインスリン効果値を計算できる状況に巡り会うことがある。そのため、インスリン効果値の計算を頭の隅っこに入れています。そうするとチャンスを逃すことなく計算でき、インスリン効果値の見直しができる。

 

糖質比(カーボカウント

糖質比について、コンビニのおにぎり(40g)を食べ時、糖質比10g/uとすると必要なインスリン量が40÷10=4uになる、との例が示されました。

 

私は、発症後、成分表で糖質量が記載されている食べ物で、食前と食後3時間の血糖値を測定して、糖質比を計算しました、1回の計算では誤差があるので、数回の平均で決めました。その後、記録を取って、糖質比を補正しています。

 

糖質の簡単な計算方法として

① 主食の糖質量

ご飯     重量(g) ✕ 40% = 糖質量(g)

パン・もち  重量(g) ✕ 50% = 糖質量(g)

麺類・芋類  重量(g) ✕ 20% = 糖質量(g)

② 副食の糖質量  20g (固定、小食の場合は10g)

食事で摂る糖質量は、①+②として、目安にする。細かく計算する人もいるが、細かい計算はしなくて良い。

小谷先生がある患者会カーボカウントの話しをしたら、ひとりの1型患者が「私はそんなものを使わずに、何十年も元気で生活してきた」との反論を受けたとの事例。その方は食品交換表による食事を摂っていて、炭水化物・脂質・タンパク質を決められたバランスで摂り、それに合わせたインスリン量(固定)を射つ生活を続けていた。その方にはその内容が合っている、要は十人十色で、自分に適した方法があれば、それが良いとの話し。

 

私は、主食はキッチンスケールで計量、副食は大皿は10g、小皿は5gを基準にしています(この副食の計算は、以前の患者会の講演で知りました)。なお、副食に芋類(ジャガイモ、里芋)が含まれているときは計量するか、ざっくり計算。

外食時は、お店に頼んで、主食(例えばご飯を150g)の計量をお願いしています。それができない場合は、盛り方を見て勘で決めています。副食は、メインは10g、小皿は5gで決めている。

 

まとめ

講演の最後に、小谷先生が強調されたことは、「血糖値を自分がコントロールする」との意識を持つこと(主体的に取り組む姿勢)が大事、そして血糖コントロールは十人十色なのだから、「日々の生活で負担が少ない、実施可能な方法を選択する」のがよい。これが、『1型糖尿病について、インスリン使用が「治療」ではなく「生活」になるにつながることになる』。

 

私は、血糖コントロールに必要なもろもろ(血糖値測定、カーボカウントとミール・ボーラス、タンパク質・脂質への対応など)を生活の中でルーチン化することを目指しています。その観点で、小谷先生の講演内容は、とても合点がいきます。