リザーバの気泡抜きの記事(「リザーバの気泡をほぼ完璧に取り除く」)を書いてから3年以上が経ちました。今もこの記事の手順で気泡抜きをしていますが、簡略化などの変更した部分があるので、まとめ直します。
私は、①バイアル1瓶をまとめてリザーバに充填する、②充填したリザーバを室温で保管し必要に応じて交換する、の2つに分けて行っています。これが、時間短縮と確実な気泡抜きになります。
リザーバの充填
ストックの充填済みリザーバの最後の1本を使う時、冷蔵庫からバイアルを取り出し、半日くらい放置して室温に戻した後、バイアル1瓶全部をリザーバに充填します。
充填する手順は、次のとおりです。
- リザーバに充填する単位数を目処にプランジャ(ピストン)を引く(広げる)
- バイアルをテーブルに置き、トランスファガード(バイアルキャップ)を上から押し込む
- プランジャ(ピストン)を押し下げ、リザーバ内の空気をバイアルに移す
- 天地をひっくり返して(バイアルが上、リザーバが下)、バイアル内の圧力でインスリンをリザーバに移動させる
- 4では必要量のインスリンが移らないので、プランジャ(ピストン)をゆっくり引き、目標の目盛までインスリンを充填する
- プランジャ(ピストン)を押して引くを静かに2~3回繰り返し、リザーバ内の空気をバイアル側に押し出す
- リザーバを回しながら、リザーバ(特にOリングを中心に)の周囲を叩く(私は、ハサミを逆さに持ち、握りの部分で叩いている)
- プランジャ(ピストン)を静かに押して、リザーバ内の空気をバイアル側に押し出す
- プランジャ(ピストン)を静かに引いて、インスリンをリザーバの必要目盛まで充填する
- 7~9をもう一度繰り返す(7~9を合計2回行う)
- バイアルをテーブルに置き、トランスファガード(バイアルキャップ)からリザーバを引き抜く
私の場合、リザーバに150単位を充填するので、一度にリザーバ6本を作ります(所要時間は15分ほど)。
充填で気をつけていること
1.リザーバは必要とするインスリン量よりも約15単位余分に充填される
リザーバの先端にデッドスペース(下図の赤枠)があり、ここに約15単位が入るため、必要量に約15単位プラスしたインスリンの充填となる。
2.リザーバ充填時の気泡抜きは適当でOK
リザーバを使う時にきちんと気泡を抜くので、充填時はリザーバ内に気泡が目立たないレベルでOKとしている。
3.充填直後はリザーバ内のインスリンに空気が混じっている
バイアルからインスリンを充填する際、バイアル内のインスリンが攪拌されるのを避けられず、リザーバ内のインスリンに(微細な気泡となって)空気が混じった状態になる。
充填したリザーバを立てて(先端が上の状態で)静かに保管し、インスリンに混じった空気が自然に分離されるのを待つ。
4.充填後のリザーバは室温で保管する
充填したリザーバは、無印良品のアクリル・ペンケースに入れ、ほこりや細菌の付着を防ぐためにラップでカバーして戸棚(暗所、室温)で保管している。
充填したリザーバを冷蔵庫で保管すると、使用時の温度変化で気泡が発生する恐れがある。また、充填後のリザーバを室温で保管しても、直射日光を避け、エアコンの風に当てないようにすれば劣化しない(ペンを常温で保管し使用するのと同じ)、
リザーバの構造
リザーバ各部の名称:
リザーバ内の気泡を確実に取り除くために、リザーバの構造を理解することが役立ちます。リザーバ本体は、下図の3つの部品で構成されています。
チューブコネクタをリザーバに接続すると、下図のようにチューブコネクタ内の針が部品Bから飛び出た形になるので、針の脇に気泡が溜まると抜けずにリザーバ内に残ります。
チューブコネクタを緩めて針の位置を上に移動させれば、針の脇に溜まった気泡を抜くことができます(下図)。
メドトロニックの【レニーと学ぼう】「リザーバや注入セットに残った気泡(空気)によるトラブルを防ぐために」の巻(「https://www.medtronic-dm.jp/csii/pdf/download/DIB1911-25.pdf」)に注意事項が載っています。この④で「チューブとの接続部分の見えにくい空気もしっかり抜く」とありますが、この「チューブとの接続部分の見えにくい空気」は、上図を指しているようです。でも、これはリザーバを叩くだけでは抜けないでしょう。
もう1点、重要なこと、分解写真の部品Bは、スポンジ状の材質で、極めて微細な無数の穴(通気孔)があります。この部分にインスリンが付着するとポンプが誤作動する可能性があるので、注意が必要です(下図は、640GシステムユーザガイドのP100から抜粋)。これは、下記のステップ4または8で、チューブコネクタを緩める際、チューブがリザーバから抜けない(外さない)ように気をつけます(抜いてしまうと、チューブ先端の針からインスリンが滴り落ちる可能性がある)。
リザーバの気泡抜き
ポンプのリザーバを交換する直前に、充填済みで保管しているリザーバの気泡を抜きます。ここで、しっかり気泡を取り除きます(ポンプ使用中にチューブ内に気泡が発生すると、容易に気泡を除去できない)。
手順は以下で、慣れると数分でできます。
1.保護キャップを外す
シルエットのカニューレ接続側の保護キャップを外す(クイックセットの場合は不要)。
チューブにインスリンを押し出すので、チューブを塞いでいる保護キャップを外す。チューブの先端からインスリンが出るのを確認するためにも保護キャップの取り外しが必要。
2.チューブコネクタをリザーバに取り付ける(コネクタをロックしない)
リザーバにチューブを接続する。ただし、ロックしない。
この時、リザーバを静かに扱う(振ったりすると分離した空気が攪拌される)。
3.チューブ内にインスリンを10センチほど押し出す
プランジャ(ピストン)を押して、インスリンをチューブ内に10センチほど押し出す。
ステップ5で、気泡が押し出されるのを確認できるようするため、インスリンをチューブ内に少量押し出す。
4.チューブコネクタを緩める
リザーバから抜かないようにして、チューブコネクトを3ミリほど緩める。緩める位置は下図の写真の位置が目安。この時、チューブ内のインスリンがリザーバに戻る(逆流する)ことがある。そうならないように、プランジャ(ピストン)エンドを右手の小指に当てた状態でリザーバを握り、左手でチューブコネクトを掴んで、静かに緩める。
写真①から写真②の位置へ緩める(写真③の位置が目安)
5.インスリンを10センチほど押し出す
プランジャ(ピストン)を押して、インスリンを10センチほど押し出す。
この時、プランジャ(ピストン)が硬くて動かない(インスリンを押し出せない)場合、チューブコネクタの位置が緩み過ぎている(抜け過ぎている)ことが原因なので、下図のようにリザーバを持って、親指と人差し指でコネクタの位置押し下げ微調整する。
押し出されたインスリンと一緒に、5~10ミリくらいの長さの気泡が出てくる(気泡が出ないこともある)。リザーバの先端部に気泡が集まっていなければ、気泡は出ない。
6.チューブコネクタをリザーバに押し込む
チューブコネクタを押し込む、ただし、ロックしない。
7.リザーバの周囲を叩く
リザーバを回しながら、外側を叩く。特に、Oリングの上をしっかり叩く。
私はハサミを逆さに持って、握る部分で叩いている。
8.チューブコネクタを緩める
ステップ4と同じ。
9.インスリンを10センチほど押し出す
ステップ5と同じ。
10.チューブコネクタをリザーバに押し込む
ステップ6と同じ。
11.7~10を数回繰り返す
チューブに押し出されるインスリン内に気泡が混じらなくなるまで、数回繰り返す。
私は、ルーチンとして、ステップ3~6を含め、「叩く→緩める→押し出す」のサイクルを6回行っている。3回目くらいで気泡が無くなるが、インスリンをチューブ先端のカニューレ接続部から滴り落ちるまで行っている。
12.チューブコネクタをロックする
これで気泡抜きが終わり、リザーバをポンプに装着します。