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My life with type 1 diabetes.

770G(640G後継)で何が良くなる?

9/6 「補足」を追記しました。

9/25 770Gの記述を修正 →  770G(640G後継)で何が良くなる? を参照ください。

 

今日は、私のポンプ記念日。4年前の8月31日にポンプを導入しました。

この日にちを覚えているのは理由があります。

ポンプ導入を日帰りで行うことになり、自分で導入日を選びました。これが失敗でした。導入時の支払額は約2.7万円。1週間後にポンプの使用状態のチェックで再び受診、その時の支払額は約2.8万円。合計約5.5万円だったので、びっくりしました。なぜ、こんな高額なのか疑問に思い、保険点数の仕組みを調べました。理由は、ポンプ導入日が月末だったため、たった1日のポンプ利用で保険点数がフルに請求されたことです。もしポンプ導入を1日遅らせ9月にしていれば、2回の診療が同じ月に収まり、ポンプの保険点数加算が1回に減り3230点(約1万円)少なくなった。さらに、この時、病院側の計算ミスにも気がつき、病院の会計に問い合わせて返金して貰いました。同じ月の受診にした場合、計算ミスと合わせ、4万円以下になったはず。

この出来事がポンプ関連の保険点数を勉強する切っ掛けになりました。ポンプの医療費は高額・複雑なので、保険点数に合わせて、受診する頻度と、処方を受ける内容を考えています。

 

4年前に使い始めたポンプはミニメド620G。その年の11月に640Gが発表され、翌年6月に640Gに切り換えました。海外では、670G→770G/780Gと新しい機種になっているので、640Gはかなり旧式のポンプです。

 

ところで、昨年からいくつかの情報で、新しいポンプが発表されるとの噂を聞いています。先月開催された某患者会のグループディスカッションで、糖尿病専門医の先生から、早ければ今年後半、遅くても来年春に新しいポンプが使えるようになる、との話しを聞きました。

私は、次は770G、スケジュールは今年の11月頃に発表、来年4月くらいから出荷、と予想しています。

 

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640Gの後継が770Gと考える根拠

メドトロニックの製品ラインは、

  640G→670G→770G/780G

ですが、日本における次世代のポンプは770Gになると考えています。

その根拠は、

  • メドトロニックは、670Gの新規販売を今年2月1日付で中止を発表した( MiniMed 670G Insulin Pump System Discontinuation | Medtronic Diabetes )
  • 昨年1月に開催された某患者会で、K医大の専門医から「670G BLE(Bluetooth Low Energy)版の治験を行っている」との話しを聞いた
  • 670GにBLE有りの製品は存在せず、770Gと670Gのポンプ機能はほぼ同じで、両モデルの違いの一つは770GがBLEで動くこと

です。

 

770Gで何が変わるの? 

770G Sysytem User Guide(参照したマニュアル→ここをざっくり読みました。斜め読みなので、概要の把握レベルです。

備忘録として、理解したことをまとめます。

 

新たに利用できる機能は

  • CGMセンサがガーディアンセンサ3になる
  • トランスミッタとポンプの通信はブルートゥースで行われる
  • ハイブリッド・クローズド・ループ(スマートガード・オートモード)により、ターゲット血糖値(120mg/dL)に近づけるための自動ベーサルが利用できる
  • ポンプの情報をスマホに表示したり、遠隔からモニターできる

があります。

これらについて、もう少し詳しく書きます。

 

ガーディアンセンサ3

このセンサのメリットは

  1. 使用日数が7日になる
  2. 実測との誤差が減る

です。

 

較正の条件は現在と同じで、2時間以内のWarm-up後に初回較正、6時間以内に2回目の較正、それ以降は12時間以内の較正が必要。MARDを最適化するためには1日3~4回の較正が推奨されている。

 

実測との誤差はMARD(Mean Absolute Relative Difference)で表示されますが、640Gのエンライト・センサのMARDは13.6%に対して、ガーディアンセンサ3は8.7~9.1%(腕に留置した場合)、大幅な改善です。

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Dexcom G6のMARDが9.0%なので、これと遜色ない精度です。

MARDの比較資料→ここ

 

興味深いのは、推奨されるセンサの留置部位が腹部と腕の2箇所のみで、留置部位によってMARDが異なることです(腹部に留置した場合のMARDは9.6~10.6%)。

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トランスミッタ

ガーディアン・リンク(3)と呼ばれ、GL3と記された新しいトランスミッタになります。

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GL3のポンプとの通信はブルートゥースです(現在の通信方式は2.4GHzメドトロニック・プロトコル)。

機内モード(Airplane Mode)は廃止されています。

 

スマートガード(SmartGuard)

スマートガードには、マニュアルモードとオートモードの2種類があります。

 

マニュアルモードは、640Gのスマートガードと同じで、低血糖前、あるいは低血糖時に、ベーサルを停止します。

 

オートモードでハイブリッド・クローズド・ループを実現します。ただ、この機能はDIYのクローズド・ループとは異なるようです。というのは、いつでも(どのような血糖値でも)ベーサルによる追加ボーラスで血糖コントロールする訳ではなく、次のようになります。

  • ターゲットの血糖値は120mg/dLが固定で、(運動する場合など)一時的に150mg/dLまでの範囲に変更できる(120以下をターゲットに設定できない)
  • ボーラスウィザードを使用することが前提の一つで、糖質比の設定、ミール・ボーラスをカーボ入力で行う必要がある
  • スマートガード・オートモードは、定められた条件に合致し、48時間のWarm-upが経過した後にアクティブになる
  • スマートガード・オートモードがアクティブになると、ベーサルが自動計算され、オートベーサルによりインスリン注入が行われる
  • 定められたセンサ・グルコース値を超えている場合は、推奨ボーラスが表示されるので、使用者はそれを受け入れるか否かを決めることができる

 

ケアリンク(CareLink)とスマホ連携

ケアリンク・コネクト・アプリをGoogle play/Apple Storeからスマホにインストールすると、ポンプの情報を表示できます。

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Google playでは、既に日本語版が準備されています。

 ケアリンク・コネクト・アプリの説明(下図)に「ケアリンク™コネクトアプリはミニメド™ 700シリーズインスリンポンプシステムでのみ動作します。」と明記されていることからが、770Gの発表が近いことを示していると思います。

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ケアリンク・コネクト・アプリでクラウドにデータがアップロードされるので、遠隔からポンプをモニターできます。

なお、コントア・ネクスト・リンク2.4は770Gに接続できないので、Nightscoutの利用は従来の方法ではダメで、xDrip+修正版を用いて行います。

 

780Gとの関係

780Gは次世代ポンプの本命です。インスリン療法の観点で、770Gは670Gと同等の機能です。780Gになると、スマートガード・オートモードが進化して、ターゲット血糖値は100mg/dLに設定できるようになります。CGMセンサはガーディアンセンサ3で動きますが、ガーディアンセンサ4で較正なしになるようです。

ヨーロッパの主要国(英国など)では、既に780Gの利用が始まっています。米国では780GのFDA承認待ちですが、670Gユーザーは770Gへの移行が進んでいます。770Gから780Gへのアップグレードは、ファームウェアの更新で行えます。

 

感想

770Gのスマートガード・オートモードは、平たく言えば、ベーサルの自動調整のようです。それも、血糖値120mg/dLで安定することを目指した自動調整ですね。

食事ごとにカーボを計算してボーラスウィザードでミールボーラスを入れる、タンパク質や脂質を考えて追加ボーラスする、これらの自動化が難しいのは分かりますが、ボーラス不足で血糖値が高い場合の対応はカバーされない、そこに”ハイブリッド”と呼ばれる理由があると思います。

人工膵臓が実現できるまでには、まだまだ長い道のりがかかると思います。それまでは、ポンプの特性を理解して、自分の体の変化にポンプの機能を合わせる(使い熟す)しかないでしょう。

その観点で、私個人は、次のような対応をしようかな、と考えています。

  • 770Gで期待するのは、CGMセンサの精度向上(ガーディアンセンサ3)
  • 導入で起きる面倒な部分(Nightscourtの環境移行など)があるので、一刻も早く使いたいとは思わない
  • 導入後は、スマートガードをマニュアルモードで使い、新しいポンプの機能に慣れる。特に、較正のアルゴリズムに慣れることが重要と思う
  • その後、スマートガードのオートモードをトライアル的に使い、有用性を確認したい(私は食前と就寝時の血糖値が100mg/dLになるように血糖コントロールしているので、オートモードのターゲット血糖値120mg/dLが高過ぎて自分には合わないかもしれない)

 

補足

Terry Witt(FBグループNightscout for Medtronicの管理人)がFacebookで770Gと670Gの比較をコメント(ここ→プライベートグループのためアクセスが限定)しています。参考になるので、これを引用します。

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  1. 770Gは、670Gとコントロールアルゴリズムが同じだが、スマートフォンを使うことで、従来は受け身で行っていた対応がプロアクティブ(積極的)な対応に変えることができる。この結果、血糖コントロールが改善し、TIRが70%台から90%台に向上したとの声が多数寄せられている(FB Medtronic 670G, 770G, 780G Supprt Groupユーザーの投稿から)。
  2. ポンプのアラーム・システムが改良され、アラームが表示される頻度が大きく減少する。ポンプ使用者が安眠できるようになった。
  3. ポンプの情報がブルートゥースで接続されたケアリンク・アップローダー(ケアリンク・コネクト・アプリの機能の一部)により自動的にクラウドに保存されるので、リモートからのサポートを得られ易い。
  4. 家族や配偶者がリモートでポンプ情報を共有できるので、ポンプ使用者が低血糖で意識を失い、ポンプのアラームを認識できない場合でも、家族や配偶者にアラームが届く。
  5. 770Gの機能追加や改良が行われた場合、ソフトウエア更新でそれらの利用が可能となる。この仕組み(ソフトウエア更新)は2021年12月からの実施が予定されている。米国では、780GがFDAで承認後、使用中の770Gは780Gへアップグレードされる予定。780Gでクローズド・ループが実現できるので、このソフトウエア更新の機能はとても価値がある。

 

#770G #インスリンポンプ