前記事(「較正の仕組みを考える:① 較正係数」)の続きです。
データを集め分析したことで、センサの特性と較正の関係を把握できました。その過程で、較正係数の6日間の変化をグラフにして、視覚的に捉えました。
6日間の較正係数
下図はセンサ8個の較正係数の変化。横軸は使用開始からの経過時間、縦軸は較正係数、タイトルの括弧は使用期間です。例えばAは4/11~18、Bは4/23~29に使用しました。Aの終わりの日とBの始めの日が6日離れているのは、使用期間を延長して2クール使用してからです(使用期間を延長した場合(2クール目)、センサの反応が異なるので別記事にします)。
これら8つのグラフに共通の特長は
- 最初の1日は、右肩上がりで変化する
- 2日目以降は、波打つように上下に変動する
です。
最初の1日(24時間)
センサ使用開始後の1日目は、センサグルコースの精度が低い状態が続きます。この理由と対策について考えます。
メドトロニックのエンジニアが作成したレポート((PDF) Accuracy of the Enlite 6-Day Glucose Sensor with Guardian and Veo Calibration Algorithms)に次の記載があります。
The sensor is leased accurate during the first day of operation, likely because of sensor initialization and run-in effects common at startup with enzyme-based in vivo glucose sensing.
技術レポートで読者が限定されているために説明が省略されているようで、この英文をそのまま日本語にしても意味が分かりにくいので、私の解釈を書きます。
センサの電極に負荷をかけて電極に塗られた酵素を間質液に馴染ませる初期化(sensor initialization)が行われます。電極に負荷をかけた後、ISIG値がある程度落ち着くまでの時間がWarm-up(準備中)です。Warm-upが終わると初回の較正となり、ポンプにセンサグルコース値が表示されますが、その後もISIG値が高い状態が続き、徐々に定常状態に近づきます。この時間がおよそ1日(24時間)という感じです。
ISIG値と体内のグルコース値との対応関係(較正により決まる基点のグルコースと較正係数)を確定させるのは複数の較正が必要となるはずで、その理由は、較正係数はISIGとグルコースの変動率であり、1回の較正では決まらない。初回の較正で設定される較正係数は仮決め的なものに見えます。
したがって、初回の較正から2回目の較正までに表示されるセンサグルコース値の信頼性が低い思います。実際、表示されている数値が当てにならないことがあるので、心配な時は、実測で確認するようにしています。
具体例で説明します。
7/1朝に使用開始したセンサを、9:12に実測値207mg/dLで初回較正を行いました。この時の較正直後の ISIG値は64.46。
下図は、翌日(7/2)の昼に、実測値が同じ207mg/dLで較正した時のISIG履歴です。
実測値が同じ207に対して、ISIG値が初回較正の時は64.46、27時間後では43.03となり、約20低下しています。
2回目の較正は、初回較正の5.8時間後の15:02に実測値89mg/dLで行いました。
このセンサ使用中に、偶然、同じ実測値89で較正しました(下図)。
これらの2つの画面を比べれば、センサ使用1日目のISIGが定常時よりも高いことを確認できます。より正確な比較として、7/1 15:15のISIGは27.05、7/5 8:40のISIGは24.35であり、同じグルコース値について1日目では約3高いことが分かります(較正完了時のISIG値は、履歴画面に表示されないが、それを知る方法がある)。
このように、センサ使用1日目のISIGが安定していない(定常状態よりも高い)ことが、センサグルコースに影響を与え、精度を低くしている原因の一つです。
較正
使用1日目に起きるセンサの特性に対応するために行っている、私のやり方です。
センサの留置
使用開始する1日前にセンサを留置しています(詳しくは「SAPセンサ、DAY1のグルコース値を安定させる」を参照)。これは、ISIGが低くなるトラブル(詳しくは「SAPセンサは最初の24時間が関門?」を参照)を避けるために行っています。なお、このトラブルは、新しいセンサを使い始める時に毎回必ず起きるものではありません。
センサの不調で、突然センサ交換する場合は、
- 新しいセンサを留置する
- 使用中のセンサからトランスミッタを外し、充電する
- 充電が完了したら、新しいセンサにトランスミッタを接続する
で行います。この手順で、新しいセンサが30~40分ほど間質液に浸るので、気休めかもしれないが、ISIGが低くなるトラブルは皆無です。
初回較正
初回較正が朝食後1時間にくるようにしています。でも、Warm-up(準備中)の時間が1~2時間で不確定なので、これは努力目標。
使用する1日前にセンサを留置すると、電極が間質液にしっかり馴染むためと思うが、初期化直後のISIGがかなり高くなります。そのため、較正許容範囲外のエラーになることがありますが、その時は、較正でインプットする数値を実測した血糖値ではなく、エラーを回避する数値で行っています(詳しくは「新センサの初回較正エラーと低血糖」を参照)。
2回目の較正
2回目の較正は『初回から6時間以内』となっていますが、なるべくISIGが定常状態に近づけるために、なるべく初回較正から6時間後に、少なくとも5時間後に行うようにしています。較正は直近の5回の較正データ(初回較正は除外?)が参照されるアルゴリズムのようなので、ここから、きちんと較正するようにしています。
なお、較正が初回から6時間以内に行えないとグルコースが表示されなくなりますが、そうなっても気にせず、都合が良い時に較正しています。
3回目以降の較正
3回目以降は、就寝中のポンプグルコースを信頼できるレベル(較正係数)にあげるために、寝るまでに数回(最低2回、多い時は3~4回)の較正を行っています。
夕食から1~2時間後に3回目の較正をします。夕食後の血糖値が高い時に較正するのが目標ですが、食後でも血糖値が高くならないことがあったり、タイミングを忘れてしまうことがあります。その場合でも、夕食後に3回目の較正を行うようにし
寝る前に較正します。これが4回目になることが多いですね。午後10時ころに夕食の影響で高血糖が続くような場合は、そこで4回目、寝る前に5回目、となることもあります。
まとめ
センサ使用1日目は、
- 初回の較正で較正許容範囲外のエラーが起きたら、適当な数値をインプットして回避する
- 2回目の較正は初回から6時間後を目指す
- 2回目以降は、寝るまでに数回(最低2回、多い時は3~4回)較正する
という感じで較正しています。
基本的な考え方は、ルーチン化です。そして、各較正時の較正係数の変化をチェックします。
使用開始から約1日が過ぎると、ISIG値とグルコースの関係が安定します。次回は、2日目以降について書く予定です。