ポンプのセンサ較正の仕組みについて理解(推測)したことをまとめます。
ポンプのグルコース値が実測値から乖離しないように較正する、これ当たり前のことだけで、意外に難しく、面倒。
数ヶ月前に海外のサイトから得た情報が発端で、較正時のデータを集め検討しました。すると、ポンプの較正の仕組みが理解(推測)でき、効率的・効果的に較正できるようになりました。
メリットは
です。
なお、ここで書く内容は、私の理解(推測)です。異なる環境(センサの留置部位や使用方法など)では、ポンプの動きが変わる可能性があります。
較正とは?
センサの較正で何が行われるかを知ることが基本で、重要です。
較正のためにポンプに実測値をインプットすると約15分後に較正が終わります。この時、ポンプは、実測値とISIG(センサ読み取り値)との関係を決めます。
ISIGは、Interstitial Signal (間質液の信号)の略。
メドトロニックは、『ミニメド640G システムユーザーガイド』では、単にISIG値としていますが、『レニーと学ぼう!』の『インスリンポンプサークルNo.5(グルコース値なし)』では、「電流値」と呼んでいます、
ISIGは血糖値(血液中のグルコース値)ではなく、間質液のグルコース値でもない。グルコース値に換算(算出)するための電気信号。Raw data(生データ)です。
下図は、10:58に実測値88で較正しました。11:12に較正が終了し、較正係数が3.8です。
この較正により、
- 実測値88に対応するISIGを決め
- 較正係数を3.8と決めた
ことになります。
これ以降に表示されるグルコース値は、次の計算式で算出されるようです。
グルコース値 = 較正完了時のグルコース値 + ISIG変動量✕較正係数
上図の場合、22:50に次の較正を行った(下図)ので、較正直前のISIG値は、34.23、グルコース値は121です。これを、計算式に当てはめると
88+(34.23-24.91)✕3.8=88+9.32✕3.8=123
になります。
これを図で示します。
基点となる較正完了時のグルコース値は88、ISIGの変動量が+9.32なので、グルコース値の増減量は+35、したがって、このISIGの変動量に対応するグルコース値は88+35=123。
計算値123に対して、実際のグルコース値(較正直前の22:47)が121で、完全に一致していません。この差異が生じる理由は
- ISIG値は不連続に変化することがあるので、計算結果がグルコース値にならず、スムージングされる
- センサの特性でISIGが大きく変動(凸凹)することがあり、その変動をストレートにグルコース値に反映しない
などの処理がポンプ内で行われていると考えています。
これを具体例で説明します。
較正①で確定した較正係数は4.8、基点のグルコース値は195で、これらが較正②がスタートする直前まで使われます。
下図は、較正①と較正②の間のISIG履歴です。
5つのグルコース値を計算値と比較します(黒太字が計算値、赤がポンプのグルコース値)。
- 11:23 195+(36.93-42.97)×4.4 = 166 ⇔ 165
- 11:28 195+(34.39-42.97)×4.4 = 154 ⇔ 157
- 11:33 195+(34.18-42.97)×4.4 = 153 ⇔ 153
- 11:38 195+(36.49-42.97)×4.4 = 164 ⇔ 157
- 11:43 195+(34.92-42.97)×4.4 = 156 ⇔ 156
ISIGが、36.93 → 34.39 → 34.18と減少するのに従って、表示されたグルコース値は165 → 157 → 153と下がっています。11:28の計算値154に対してグルコース値が157となっているのは、ISIGが36.93から34.39と大きく減少したため、変動量を抑えたと考えられます。次に 36.49 と上昇したが、そのままグルコース値を164にすると急激な反転で不自然な変動となる。現実的ではない(あり得ない)変動にならないように、グルコース値を157としていると推測できる。その後、ISIG34.92に対応して、グルコース値を156としたのでしょう。
15:43では
- 15:43 195+(24.84-42.97)×4.4 = 108 ⇔ 107
と、ポンプが表示したグルコース値が較正係数による計算値とほぼ一致している。
較正係数
較正係数は、センサグルコースを表示するための重要な役割を担っています。センサグルコースは実測値から乖離する原因の一つは、較正係数が正しく設定されないためと考えられます。
Nightscoutで、較正係数を表示することをができます。
較正係数の大きさで表示位置を上下にずらして、視覚的に表示しているのが注目ポイントです。これは、較正係数の変化がセンサグルコースの精度(実測値から乖離する可能性など)を示すからだと思います。
センサグルコースの実測値からの乖離は
- 最初の24時間
- センサ感度の変化
- 実測(SMBG)の誤り
- 較正する血糖値の範囲が狭い
- 低い血糖値で較正
- センサの劣化
で起きます。次回、これらが起きる状況と対応策について書く予定です。