1型でいこう!

My life with type 1 diabetes.

発症してから感じたこと

先日、医療従事者向けの糖尿病研修講座に呼ばれ、『1型糖尿病患者の本音』というテーマで自分の経験を話してきました。糖尿病治療に携わる医療者が患者の声を直接聞き、日常での診療に役立てたいとの趣旨で設定されたものです。受講者は約150人で、看護師、管理栄養士が8割、他は医師等です。

 

私が話した内容は、発症からの2年3ヶ月を3つのフェーズに分け、何をして何を感じたか、です。

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回復期間(2016年12月~2017年1月)

  • 劇症1型の発症からケトアシドーシスになり、ICUで1週間の治療を受けました。その時の血糖値は1,079mg/dLでした。ICUの治療で体調が回復した後、一般病棟に移り、いろいろな検査を受け、インスリン分泌が枯渇していることが分かりました。
  • Ⅰ型の発症は突然のことだったので、悩む余地もなく、「ああ、そうなんだ」という感じで受け入れました。
  • 入院中に受けた糖尿病教室は2型の患者向けの内容であったことに加え、退院後に生かせる内容に乏しく、合併症に対する恐怖心を植え付け、HbA1cが7%以下にすることを目標にしましょう、が前面に出たもので、モチベーションにつながる情報が不足していました。
  • 入院中、メモ帳に血糖値や検査結果、主治医の説明などを書いていました。この「記録する」は、その後も続け現在に至り、自分の生活に密着した習慣になりました。これが、血糖コントロールする上で、とても役立っています。
  • 退院後の日常生活復帰は手探りでした。食前、眠前に測る血糖値が300や400になることも多く、家人の不安が大きく、私自身も外食することをためらうことが多かった。

 

模索の期間(2017年2月~2017年8月)

  • 退院から1ヶ月後の最初の定期通院の時、食事を記録したノートを持参し、主治医に見せました。主治医は、それを見て、『かんたんカーボカウント』の本を私に渡し、「これを読んでカーボカウントを勉強しなさい。やり方を理解したら、カーボ量をノートに記入する。ある程度慣れてきたら、次回の通院日までにインスリン単位の調整を数回行ってみる」とのアドバイスをしてくれました。ここから、カーボカウントがスタートしました。
  • カーボカウントインスリン単位を調整するためには、インスリン・カーボ比やインスリン効果値が必要です。これらについて、50・500・1500ルールを出発点にしました。
  • 1ヶ月の試行期間を経て、インスリン単位の調整を全食に対して行うようになりました。インスリン・カーボ比は、徐々に精度を改善しました。日を経て、インスリン単位調整に慣れ、インスリンの頻回注射を行うになりました。このように段階的に進めたことが、カーボカウントによる血糖コントロールを身につけるのに効果がありました。
  • ネットの情報で、フリースタイル・リブレの存在を知り、6月下旬に自費購入(保険適用前)で使い始めました。2ヶ月間使って感じたことは、血糖変動を把握できることがメリットであり、リブレの機能面の限界(グルコース値の精度にブレがある(特に低血糖側が低めにでる)、リーダーをリブレにかざさないとグルコース値が分からない(低血糖高血糖の通知する機能がない))があることがデメリットと感じ、ポンプの導入を決めました。

 

QOL改善/安定の期間(2017年9月~現在)

  • ポンプの導入は1日(日帰り)で終わりました。10時ころに病院へ行き、メーカーの人(MR)から説明を受け、器具の操作の訓練を受け、主治医と会話し、ポンプの装着・設定を行い、ポンプの器具を受け取り、16時ころに終了というスケジュールでした。そして、1週間後に、通院して使用状況の確認が行われました。こう書くと、とても簡単に見えます。
  • 確かに、スタートは簡単でした。ところが、使い始めるとトラブルが続出しました。トラブルの原因は、慣れていないこともありますが、説明書に書かれていないことが多く、トラブルを乗り越えるのに、かなりの日数がかかりました。
  • 使い始めて3~4ヶ月経ち、使い方に慣れ、トラブルや混乱も大幅に減りました。この時点から、ポンプが本来持つ、いろいろな機能を使い始めました。
  • 現在はポンプの機能に大変満足しています。
  • ポンプのメリットは、血糖コントロールがし易いことです。特に、基礎の注入量を体の変化に合わせて決められる(30分毎に注入量を指定できる)、食事のボーラにデユアルを・ウエーブ・ボーラスを使うことで食後の血糖値上昇を抑えられる、の2点が最大のメリットと感じています。

 

私は、医療従事者の方々に、次の3点を理解して欲しいとの思いで、話しました。

 

インスリン注射をすれば普通の生活ができる』との言葉は、現実と乖離している

病院でこう言われることがあります。でも、これは正しくありません。

この言葉は、患者を慰め、頑張って欲しいと考えで使っていると思いますが、患者を傷つけることもあるでしょう。

1型の患者は、日常生活に戻ると直ぐに、普通の生活が無くなったことに気がつきます。インスリン注射を一生続けなければ生きていけないのだから、普通に戻ることはありません。

私の場合、現在、生活時間(1日の24時間から睡眠時間を除いた時間)の約8%を食前のボーラス、血糖コントロール、ポンプのリザーバやカニューレの交換等に費やしています。この生活は、”普通”ではありません。

 

『1型は患者自身が主治医』との言い方は無責任に感じる

患者が主治医になれないのは当たり前ですが、患者自身で自分の体をケアする必要があるので、この言い方があるのだと思います。

しかし、患者がやるべきこと、医療が担うべきことは、この表現では伝わりません。血糖コントロールを改善するために、患者が何をしたら良いのか、もう少し具体的に説明して欲しいですね。

 

『1型は、10人いれば10人異なる』ので、型にはめないで欲しい

医療サイドから見れば、1型であること、インスリン注射が必要であることなど、”医療”の面で共通点が多いのが事実ですが、血糖コントロールは、食生活、体調、年齢、性差、生活環境と密接に関連しています。

ひとり一人が異なっていることを忘れないで欲しいと思います。

 

 次回の記事で、私の『1型に対するスタンス』を書く予定です。