1型でいこう!

My life with type 1 diabetes.

ミニメド770Gがやってくる!

お二人の糖尿病専門医が、ツィッターで「770Gの薬事承認が通った」と呟いています。

 

「薬事承認」(医薬品や医療機器の製造販売を申請)とは

医薬品や医療機器の製造販売にあたり、企業は厚生労働相に承認申請し、認められなければならない。医薬品医療機器法で定められている。

今後、『メドトロニックは保険適用の希望書を厚労相宛てに提出。厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会中医協)が医薬品の公定価格である薬価を査定する。効能が類似している既存薬の薬価や、企業が算出した原価などを基に薬価が決まり、保険適用を判断する。』が行われ、保険収載されます。この一連の手続きの完了後、販売開始となります(770Gの保険点数は、640Gと同じになるはず)。

 

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640Gから770Gへ変更する際、注意することがいくつかあります。

  • 770Gでは、センサ、トランスミッタが刷新されるので、移行までにエンライト・センサのストックをゼロにする
  • スマートガードのオートモードは、ボーラスウイザードの利用が前提になるので、今から糖質比、カーボカウントに慣れる必要がある
  • 同様に、インスリン効果値が重要となる
  • メドトロニックが推奨するセンサの留置部位は、腹部と上腕裏の2箇所のみ(14歳以上)
  • コントア・ネクスト・リンク2.4は770Gと連携できない(リモコン使用、血糖値の自動送信、共に不可)

私は、血糖値100を目標に血糖コントロールしているので、スマートガードのオートモードは使用しないでしょう。

一方、カーボカウントを行っているので、770Gへ移行後、オートモードを試してみようとは考えています。

センサは、尻(腰骨から10センチ下、背中に5センチ後の位置)に留置していましたが、9月初めから、腕(上腕裏)に留置して、違いを調べています。

 

770G(640G後継)で何が良くなる?の記事(加筆・修正あり)を以下に再掲します。

 

770Gで何が変わるの? 

770G Sysytem User Guide(参照したマニュアル→ここをざっくり読みました。斜め読みなので、概要の把握レベルです。

備忘録として、理解したことをまとめます。

 

新機能は

  • CGMセンサがガーディアンセンサ3になる
  • トランスミッタとポンプの通信はブルートゥースで行われる
  • ハイブリッド・クローズド・ループ(スマートガード・オートモード)により、ターゲット血糖値(120mg/dL)でベーサルが自動調整できる
  • ポンプの情報をスマホに表示したり、遠隔からモニターできる

これらの機能について、詳しく書きます。

 

ガーディアンセンサ3

このセンサのメリットは

  1. 使用日数が7日になる
  2. 実測との誤差が減る

です。

 

較正の条件は現在と同じで、2時間以内のWarm-up後に初回較正、6時間以内に2回目の較正、それ以降は12時間以内の較正が必要。MARDを最適化するためには1日3~4回の較正が推奨されている。

 

実測との誤差はMARD(Mean Absolute Relative Difference)で表示されますが、640Gのエンライト・センサのMARDは13.6%に対して、ガーディアンセンサ3は8.7~9.1%(腕に留置した場合)、大幅な改善です。

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Dexcom G6のMARDが9.0%なので、これと遜色ない精度です。

MARDの比較資料→ここ

 

興味深いのは、推奨されるセンサの留置部位が腹部と腕(上腕裏)の2箇所のみで、留置部位によってMARDが異なることです(腹部に留置した場合のMARDは9.6~10.6%)。

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トランスミッタ

ガーディアン・リンク(3)と呼ばれ、GL3と記された新しいトランスミッタになります。

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GL3のポンプとの通信はブルートゥースです(現在の通信方式は2.4GHzメドトロニック・プロトコル)。

機内モード(Airplane Mode)は廃止されています。

 

スマートガード(SmartGuard)

スマートガードには、マニュアルモードとオートモードの2種類があります。

 

マニュアルモードは、640Gのスマートガードと同じで、低血糖前、あるいは低血糖時に、ベーサルが停止します。

 

オートモードでハイブリッド・クローズド・ループが実現。ただ、この機能はDIYのクローズド・ループとはかなり異なります。というのは、いつでも(どのような血糖値でも)ベーサルによる追加ボーラスで血糖コントロールできる訳ではなく、次のようになります。

  • ターゲットの血糖値は120mg/dLが固定で、(運動する場合など)一時的に150mg/dLに変更できる(ターゲット120が基本、150は一時的な設定となる)
  • ボーラスウィザードを使用することが前提の一つで、ミール・ボーラスをカーボ入力で行う必要がある(糖質比、インスリン効果値の設定が必要)
  • スマートガード・オートモードは、定められた条件に合致するかチェックされ、48時間のWarm-upが経過した後にアクティブになる(一旦オートモードがアクティブになるとセンサ交換しても、オートモード状態が継続される)
  • スマートガード・オートモードがアクティブになると、ベーサルが自動計算され、オートベーサルによりインスリン注入が行われる
  • オートベーサルの最大ベーサル量と最小ベーサル量(ベーサルの増減量)は注入履歴を元にポンプが(アルゴリズムに従い)決める
  • センサ・グルコース値が150を超えている場合は、推奨ボーラスが表示されるので、使用者はそれに応じてボーラスするかを決め、対応する
  • 高血糖、トランスミッタとの通信が切れる、などが一定時間以上続いた場合、オートモードが解除され、マニュアルモードになる

 

ケアリンク(CareLink)とスマホ連携

play.google.com

ミニメド・モバイルアプリ(Google play/Apple Storeからスマホにインストール)は、インスリンポンプおよびCGMのデータをスマートフォンに表示します。同時に、クラウド(Care Link)にデータをアップロードします(遠隔からポンプをモニターできる)。

ミニメド・モバイルアプリのメニュー画面。ポンプのStatusをスマホで確認できます(スマホからのポンプ操作はできない)。

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ケアリンク・コネクト・アプリ(Google play/Apple Storeからスマホにインストール)は、ポンプから離れた場所でポンプ情報をスマホに表示できます(スマホからのポンプ操作はできない)。

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Nightscoutの利用

Nightscoutの利用は従来の方法はダメ(コントア・ネクスト・リンク2.4は770Gに接続できない)で、AndroidスマホにxDrip+修正版をインストールして行います。

私は、血糖コントロールにxDrip+が必要(アラームとスマートウォッチの接続)なこと、Nightscoutレポートを利用しているので、770GでもNightscout を使い続ける予定です。

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780Gとの関係

780Gは次世代ポンプの本命です。インスリン療法の観点で、770Gは670Gと同等の機能です。780Gになると、スマートガード・オートモードが進化して、ターゲット血糖値は100mg/dLに設定できるようになります。CGMセンサはガーディアンセンサ3で動きますが、ガーディアンセンサ4で較正なしになるようです。

ヨーロッパの主要国(英国など)では、既に780Gの利用が始まっています。米国では780GのFDA承認待ちですが、670Gユーザーは770Gへの移行が進んでいます。

770Gから780Gへのアップグレードは、ファームウェアの更新で行えますが、日本でこの機能が提供されるのか微妙です。というのは、医療機器として『薬事承認』と更新手順(安全性の担保)がネックになる可能性があるので。

 

感想

770Gのスマートガード・オートモードは、平たく言えば、ベーサルの自動調整です。それも、血糖値120mg/dLで安定することを目指した自動調整ですね。

食事ごとにカーボを計算してボーラスウィザードでミールボーラスを入れる、タンパク質や脂質を考えて追加ボーラスする、これらの自動化が難しいのは分かりますが、ボーラス不足で血糖値が高い場合の対応はカバーされない、そこに”ハイブリッド”と呼ばれる理由があると思います。

人工膵臓が実現できるまでには、まだ長い道のりがかかると思います。それまでは、ポンプの特性を理解して、自分の体の変化にポンプの機能を合わせる(使い熟す)しかないでしょう。

その観点で、私個人は、次のような対応をしようかな、と考えています。

  • 770Gで期待するのは、CGMセンサの精度向上(ガーディアンセンサ3)
  • 導入で起きる面倒な部分(Nightscourtの環境移行など)があるので、一刻も早く使いたいとは思わない
  • 導入後は、スマートガードをマニュアルモードで使い、新しいポンプの機能に慣れる。特に、較正のアルゴリズムに慣れることが重要と思う
  • その後、スマートガードのオートモードをトライアル的に使い、有用性を確認したい(私は食前と就寝時の血糖値が100mg/dLになるように血糖コントロールしているので、オートモードのターゲット血糖値120mg/dLが高過ぎて自分には合わないかもしれない)

 

補足

Terry Witt(FBグループNightscout for Medtronicの管理人)がFacebookで770Gと670Gの比較をコメント(ここ→プライベートグループのためアクセスが限定)しています。参考になるので、これを引用します。

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  1. 770Gは、670Gとコントロールアルゴリズムが同じだが、スマートフォンを使うことで、従来は受け身で行っていた対応がプロアクティブ(積極的)な対応に変えることができる。この結果、血糖コントロールが改善し、TIRが70%台から90%台に向上したとの声が多数寄せられている(FB Medtronic 670G, 770G, 780G Supprt Groupユーザーの投稿から)。
  2. ポンプのアラーム・システムが改良され、アラームが表示される頻度が大きく減少する。ポンプ使用者が安眠できるようになった。
  3. ポンプの情報がブルートゥースで接続されたケアリンク・アップローダー(ケアリンク・コネクト・アプリの機能の一部)により自動的にクラウドに保存されるので、リモートからのサポートを得られ易い。
  4. 家族や配偶者がリモートでポンプ情報を共有できるので、ポンプ使用者が低血糖で意識を失い、ポンプのアラームを認識できない場合でも、家族や配偶者にアラームが届く。
  5. 770Gの機能追加や改良が行われた場合、ソフトウエア更新でそれらの利用が可能となる。この仕組み(ソフトウエア更新)は2021年12月からの実施が予定されている。米国では、780GがFDAで承認後、使用中の770Gは780Gへアップグレードされる予定。780Gでクローズド・ループが実現できるので、このソフトウエア更新の機能はとても価値がある。

 

#770G #インスリンポンプ