前記事(「センサ使用開始時のグルコース値不安定を防ぐ(1)」)の続きです。
ポンプ/SAPを使っていると、定期的に『較正』が必要ですが、センサと較正の関係を詳しく説明する資料がありません。このことが、ポンプ/SAPを使い難くしている原因の一つと思います。較正のアルゴリズムがユーザーに開示されず、完全なブラックボックスになっていることに問題があります。
私自身は、必要に迫られたことと好奇心から、ポンプの動きを観察し、「ああ、こうなっているんだ」と感じていることがあるので、今回は、これについてまとめようと思います。
全体を俯瞰すると
- センサの初期化の影響が初回較正からしばらく続き(常に一定の時間続く訳ではない)、安定することがある
- センサ読み取り値が安定すると、概ねISIG値とグルコース値は比例関係になる(『グルコース値=a+ISIG値×b』で計算できる。この比例関係(aとb)は、6日の間で一定ではなく、変化する)
- センサ読み取り値(ISIG値)とグルコース値の関係は、センサごと(センサ個体差、留置部位などの影響)に異なる
です。
センサ留置後の初期化は、何が行われている?
エンライトセンサの電極には酵素が塗られています。センサにトランスミッタを接続すると、『準備中』が表示され、酵素を間質液に馴染ませる処理が行われます。
『準備中』の間、センサ読み取り値(ISIG値)が極めて大きな数値になります。
センサ準備にかかる時間(『要較正』のアラームが出るまでの時間)は最大2時間ですが、1時間や1.5時間などの2時間未満で終わることもあります。
ISIG値とグルコースの関係は?
2個のセンサを使い始めた時の、ISIG値とグルコース値の関係をグラフにしたものです。番号(①、②、③・・・)は、センサ初期化後の較正順です。
【A】6/29 14:27 ~ 7/2 17:12 (約3日間)
【B】7/6 19:42~7/8 22:52 (約2日間)
AとBの両者共に、 ISIG値とグルコース値が比例関係(グルコース値=a+ISIG値×b)になっていますが、この2つのケースの比較から、次のことが分かります。
- ISIG値とグルコース値の対応関係はセンサごとに異なる
(AはISIG値の20~50がグルコース値の60~200に対応。BはISIG値の25~70がグルコース値の50~230に対応) - ISIG値とグルコース値の比例関係(aとb)は、センセ初期化後、較正を3回以上行うことで確立する。言い換えると、センサ使用開始直後から3回目の較正までは、ポンプに表示されるグルコース値にかなりの乖離(誤差)が起きることがある
- Aの①(初回較正)、②(2回目の較正)、③(3回目の較正)は、青い線から離れている(紫の破線でマーク)。これは、初期化の影響で、ISIG値が高い状態が続いていることが原因。
どのように較正する?
センサ使用開始直後は、以下に注意して較正するようにしています。
- 初回較正時、較正許容範囲外のエラーが起きやすいので、血糖値が高い時(食後)に初回の較正がくるようにしている(血糖値が低い時に初回較正になると、ISIG値が高い状態と重なるので、較正許容範囲外になる可能性が高い)。
具体的には、食事の30分から1時間くらい前にセンサをトランスミッタに接続するようにしている。 - 2回目の較正は、初回から6時間後に近づける
- センサ使い始めの最初の10時間は、較正を必要最小限に留める。この間に較正を頻繁に行うと、ノイズとなって、誤差につながるように感じている
- 較正は、血糖値の山と谷で行うようにする(ISIG値の振れ幅がグルコースの振れ幅(低い血糖値から高い血糖値までの対応)と一致させる)
- センサを使い始めてしばらくの期間(1日くらい)は、ポンプが表示するグルコース値がズレている可能性があるので、多めにSMBGして、血糖値を確認するが、SMBGした全てで較正をかけない(較正する頻度を増やすとノイズになると感じている。1日で4回以内が目安)